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【連載「病理医があかす、知っておきたい「医療のウラ側」」第15回】

「干し柿」は太る! ダイエットの成否は「果糖」と「ブドウ糖」の違いを知ること

干し柿は太る!(shutterstock.com)

 近年、世間では「糖質制限ダイエット」なるものが流行している。文字通り「糖質」の摂取量を制限して行うダイエット方法だ。

 糖質が含まれる食べ物というとお菓子や果物などを想像しがちだが、ご飯やパン、麺類などの炭水化物にも糖質が含まれている。

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 そもそも「糖(とう)」とは、多価アルコールの最初の酸化生成物。一般的には炭水化物(糖質)と同義とされることが多いが、厳密には糖は炭水化物より狭い概念である。

 糖質化学や分子生物学などでは炭水化物の代わりに「糖質」ないしは「糖」と呼ぶ場合が多い。一方、生化学では「炭水化物」と称するが、徐々に「糖質」と表現することが多くなってきている。

 栄養学では炭水化物のうち、ヒトが消化できない「食物繊維」を除いたものが「糖質」と呼ばれるが、単に糖質のみを指して「炭水化物」と称されることも少なくない。

「ブドウ糖(グルコース)」と「果糖(フルクトース)」

 そんな「糖」の中でも、主役を演じる「ブドウ糖(グルコース)」と「果糖(フルクトース)」について、知っておくべき点を紹介しよう。

 蜂蜜はブドウ糖と果糖の混合物であり、白く固まる成分はブドウ糖である。ショ糖(砂糖、すなわちブドウ糖と果糖が結合した二糖類)はほとんど含まれない。

 ブドウ糖は、血液中を流れる糖質の主役である。糖尿病のときに問題となる「血糖値」は血液中のブドウ糖の濃度のことで、正常状態では100 mLあたり100mg(0.1g)前後に厳密に保たれている。

 膵臓から分泌されるインスリンと呼ばれるホルモンが、余分なブドウ糖を細胞内に取り込ませる結果、血糖値が下がり、食後でも血糖値が厳密に保たれる。

 インスリン不足が特徴である糖尿病では、血糖値が高くなり、その状態が長く続くと腎臓や網膜、そして末梢神経がおかされてしまう。

 ちなみに、ブドウ糖は点滴に使われることは有名である。血液と同じ浸透圧を保つために、5%ブドウ糖液が使われる(食塩の場合は0.9%液が等張液)。

 ブドウ糖と果糖の代謝経路の違いをみてみよう。

 ブドウ糖は、インスリンの作用で細胞内に取り込まれて、細胞活動のエネルギー源となる。細胞内でブドウ糖が分解され、エネルギー化される過程は「解糖系」と称される。

 「解糖系」の過程では酸素は不要なので、無酸素運動で活躍する仕組みといえる。解糖系の最終産物であるピルビン酸は、酸素を使ってエネルギー変換する「クエン酸回路」といわれる代謝経路に入る。

 もし、ピルビン酸が過剰になると、余ったエネルギーはアセチル-CoAという物質を経て、脂肪が合成される。急激な運動などで筋肉が酸素不足に陥ると、余ったピルビン酸は「乳酸」へ変換されて、疲れの原因となる。

 エネルギー貯留のためのもう一つの仕組みは、ブドウ糖自体をグリコーゲンとしてため込む経路で、肝臓や骨格筋でとくによく発達している。グリコーゲンは必要なときに分解されて、ブドウ糖に変換されるというわけ。

 一方、果糖は、肝細胞に特異的なフルクトキナーゼという酵素の作用で、「解糖系」を迂回する形で代謝され、最終的にピルビン酸が生成される。
 
 この過程は、血糖値やインスリンに左右されないため、大量に摂取された果糖は、必然的に「脂肪合成」へと向かう。さらに、ピルビン酸キナーゼが活性化される結果、乳酸が蓄積する。尿酸代謝にも影響し、尿酸値が上昇する。

 ラットにコレステロールを含まない高果糖食を与えると、肝での中性脂肪、さらにコレステロールの合成が促進される。つまり、栄養学的に果糖はブドウ糖と比べて「太りやすい糖」なのだ。

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