史上最も長生きしたジャンヌ・カルマンさん(1875年2月21日〜1997年8月4日)(写真はWikipediaより)
われわれヒトの寿命というものは前世紀終盤でほぼ限界に達しており、「125歳を上限」として今後もそれ以上延伸される可能性はないだろう――。そんな分析報告が10月5日の『Nature』(オンライン版)に掲載された。
米国・NYCにあるアルベルト・アインシュタイン医学校のJan Vijg氏(遺伝学部長)らの研究によれば、今後もおそらく「ヒトの最高齢の記録が、現在の122歳を超えることはないだろう」という。
[an error occurred while processing this directive]ちなみに、よく引き合いに出されるフランス人女性の故ジャンヌ・カルマンさんは122年164日を生き、生没年月日が正確に判明している例としては、現在も歴代最長とされている。
そのカルマンさんの享年例から、従来の学会筋では、ヒトの寿命限界は「120年前後ではないか」とされてきた。
一方、今回の研究を踏まえ、Vijg氏らは「平均寿命の最大値は115歳」であり、「絶対的な寿命の上限は125年である」と結論づけている。
彼らの知見が示唆しているのは、今後は長寿を達成する人が減少してゆくという意味ではない。あくまでも最高齢の記録が、現在の(カルマンさんの)122歳を超える可能性は薄いという意味である。
不動記録はミレニアム以前の122歳
斯界の史実観によれば、ヒトの平均寿命は食事面や公衆衛生などの環境整備に伴ない、19世紀以降に飛躍的に延伸されてきた。とりわけ前世紀の1970年代以降は世界最高齢も上昇傾向を現わし、カルマンさんの最高寿命も記録された。
しかし、そんな上昇傾向も1990年代初期までの流れであり、それ以降は横ばいの状態を続けている――。
そう読み取れたVijg氏らの研究に際しては、40カ国以上の死亡およびその他の人口データの統計を集めた「ヒト死亡データベース:Human Mortality Database」が用いられ、綿密な追跡調査が行われた。
結果、たしかに1900年以降も高齢者の割合自体は増加し続けていた。ところが100歳以上を迎えた人たちの層に限って経年分析すると、時代ごとの生まれた年にかかわらず100歳以降の生存率自体はさほど変わっていないことも解った。
そして、この年齢群(100歳以上の組)では、1970年代~1990年代初期にかけて死亡時年齢がやや上昇していたものの、ミレニアムに向けては横ばいの推移を見せていた。そんな解析から導かれたのが、前述の最大値115歳であり、125歳の限界説というわけだ。
Vijg氏は「それでも、人口統計学者や生物学者たちはこう言うかもしれない。『最大寿命の延伸がほぼ限界、それはまもなく終わるなんて考える理由はない』というふうに。だが、今回のわれわれのデータは、すでに1990年代時点でそれが限界に達していることを強く示唆しています」と話す。