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【インタビュー「職場でのうつ病の再発を防ぐ」秋山剛医師(NTT東日本関東病院精神神経科部長)第1回】

双極性障害や発達障害が疑われる人の「うつ病休職」〜 復職のためのポイントは?

なぜ「うつ病」で休職を繰り返してしまうのか?(shutterstock.com)

 うつ病で休職中の社員が、毎日決まった時間に病院に通い、同じうつ病の仲間とともに再発を防ぐためのプログラムを受けることが「うつ病のリワーク」と呼ばれ注目を集めている。

 いま、うつ病やうつ病休職をめぐる最新事情はどうなっているのか? 日本でうつ病のリワークを進めるプログラムを普及させた中心的人物のひとりである、NTT東日本関東病院精神神経科部長・秋山剛医師に、最新の知見を聞いた。

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過重労働によるうつ病は減ってきた

──最近のうつ病の傾向を教えてください。

 近年、厚生労働省は、長時間労働を抑制するためにさまざまな施策を打ち出しています。以前に比べれば、長時間労働の負荷は下がってきているのではないでしょうか。従来型の、いわゆる過重労働によるうつ病というタイプは、減ってきていると思います。

 現在は別のタイプ、軽い「双極性障害」だとか、軽度の発達障害を帯びていると思われる人がうつ病となって休職するケースが目立つようになっています。

 ちなみに、双極性障害は以前、躁鬱病と呼ばれていたもので、気分が昂揚しているときと落ち込んでいるときの差が大きい病気です。発達障害は、脳機能の発達のばらつきのための生じる学習やコミュニケーションなどの障害です。

 精神症状には、「主観的に感じるもの」と「行動に現れるもの」があります。主観的な症状は、周囲にはわかりづらい。逆に行動の変化は、本人よりも周囲の人のほうが気づくことがあります。

 たとえば、軽度の双極性障害である双極性スペクトラムの場合は、他人に攻撃的な態度を示すことで、周囲はそのテンションの高さに気づくが、本人はいたって普通だと思っているケースがあります。

 また、発達障害の傾向を帯びている方だと、対人関係の機微が読めない行動をとってしまい、周りは違和感があるけれど、本人はそのズレに気づかないことがあります。

──この「感覚のズレ」の一例として、本人はたくさん仕事をしているように感じていても、上司は「そんなに仕事を与えていない」という話がよく聞かれます。

 これは、精神疾患全般によくみられる現象す。少し症状ある状態で勤務していると、仕事をこなすことが非常な負担となり、通常より少ない業務量でも、本人は重荷に感じることがあります。

 ほかの人の仕事の状況を把握するほどの余裕もないので、「自分だけたくさん仕事をさせられている」と不満に思うわけです。

 そういうときは、本人、上司と産業医または主治医で合同面談を行ない、上司から他の社員の業務量について説明してもらい、復職者の納得感を得ながら、対応を進めるとよいでしょう。

──では、順調な復職を維持するために心がける点を教えてください。

 うつ病での休職後、復帰してすぐに以前と同じペースで働くことは、絶対に避けたほうがよいです。

 病気が回復していく<曲線>には個人差がありますが、復職した3カ月は試運転、体調がよければ4ヶ月めくらいからペースをあげていき、本当に順調な状態が続けば、復職後1年くらいしたら、元と同じレベルに戻す、が目安です。

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