“寝すぎ”でも”寝不足”でもNG(shutterstock.com)
男性として生まれた以上、寝すぎる傾向にある人も、逆にふだんから寝不足気味である人も「糖尿病リスク」を高める可能性がある――。
ところが、女性に関しては同様の傾向がみられない。そんな睡眠障害上の性差が、欧州の最新の研究で明らかにされた。
[an error occurred while processing this directive]「たとえ現在は健康な人でも、寝すぎや睡眠不足を続ければ健康的に有害でありえますね。今回のわれわれの研究では、健康のカギを握る“糖代謝”を軸に、睡眠の質がどれほど重要な役割を担っているのか。それが示されたと自負しています」
研究の主導者であるオランダ・アムステルダム自由大学医療センターのFemke Rutters氏はそう語る。彼らの知見は6月29日、『Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism』に掲載された。
研究に際しては、欧州14ヵ国の健康な成人男女約800人(平均年齢44歳、うち女性が約6割)が対象に選ばれた。
被験者らの一日当たりの平均睡眠時間は「7.3時間」で、全員の睡眠時間とインスリン感受性や膵β細胞機能との関連を検討し、解明が行なわれた。
結果、睡眠時間が「1日7時間」と平均レベルであった人たちに較べ、寝すぎや睡眠不足傾向の層の人たちには共通点がみられた。
寝すぎや寝不足の男子は糖尿病予備軍に!?
しかも、男性陣にのみ認められた特徴だ。睡眠時間が最も長かった組と最も短かった組の男性被験者らはいずれも、インスリン感受性や膵β細胞機能が低下していた。
つまり、糖尿病リスクの上昇につながることが判明したのだ。
ところが、対照的に女性陣の場合は逆の傾向をみせた。平均レベルの層に対し、睡眠時間が最長組ないしは最短組のインスリンへの反応が高く、膵β細胞機能も高まっていた。
これらの知見から女性の場合、「睡眠障害」が糖尿病リスクを高める要因とはならない可能性が濃厚だという事実だ。
「われわれの研究は、睡眠障害が糖尿病リスクに及ぼす影響については“性差がある”ということを示した初めての報告だと思います。しかし、今回の知見が、睡眠障害と男性の糖尿病リスク上昇との因果関係を証明したかといえば、それはまた別の課題ですね」
そう語るFemke Rutters氏は、現代人と睡眠障害の関連について、次のような指摘も口にした。
「社会や生活習慣のさまざまな変化に伴い、私たちの一日当たりの平均睡眠時間はこの50年間で1.5~2時間は短くなっています。その半世紀を費やして、糖尿病の有病率は倍以上に上昇している」
ウエアラブル電子機器はアーバンな必需品か!?
日本人は「世界で最も睡眠時間が少ない」という2014年の国際比較調査もあり、なかでも東京在住者の平均睡眠時間は「5時間44分」だといわれている。
また、米シカゴ大学の研究によれば、多くの人がじぶんの睡眠状態を「過大評価」しており、実際よりも「0.8時間ぶん多く見積もっている」との報告もある……。
厚生労働省の推計では、糖尿病が疑われたり、その可能性が否定できない糖尿病予備軍の数は2050万人(2012年)。
一方、経済産業省では今春、装着型情報端末(=ウエアラブル電子機器)のデータを活かして予備軍の生活習慣の改善を促そうと、「健康・医療情報を活用した行動変容モデル事業」の参加者を公募した。
今夏から半年間実施される同モデル事業では、糖尿病の指標となる「ヘモグロビンA1c値」が高いけれども「腎機能障害がない」予備層がウエアラブル電子機器を装着。
日々の心拍数/ 歩数/ 消費カロリー/ 睡眠の深さなどをスマホやタブレット類に自動転送してもらう。
さらに、体重/ 血圧/ 食事内容なども半年間記録してもらい、状態が悪化すると警告が発せられ、医師や管理栄養士ら専門陣から改善情報が提供されるという仕組みだ。
なお、このモデル事業には、トヨタ自動車や三菱地所、タニタやユニクロなども参加して実証実験が開始される。
台湾のパソコン大手のASUSからは先日、腕につけて寝るだけで「熟睡度がわかる」活動量計VivoWatchも発売された。内臓センサーが睡眠時間や寝返り回数も把握するのだとか。
日中の歩数や移動距離、消費カロリーも記録でき、スマホのアプリでデータ管理もできて、実勢価格は1万9000円前後。寝すぎ派や寝不足組の男性たちの必須グッズとなるか?
(文=編集部)