WOWOW『ドラマW この街の命に』~主演の加瀬亮さん、WOWOWホームページより
環境省の発表(平成26年)によれば、日本で1年間に殺処分される犬と猫は10万頭を越える。なぜ殺処分されるのか?殺処分の現場に向き合う行政獣医たちは、何を感じながら生きているのか?
WOWOW『ドラマW この街の命に』は、ある街の公的組織「動物愛護センター」で殺処分に携わる行政獣医たちの苦悩と勇気と希望を追った人間ドラマだ。
[an error occurred while processing this directive]犬と猫の殺処分の現場にやってきた新所長
「動物愛護センター」に行政獣医として配属された牧田洋(加瀬亮)は、犬と猫の殺処分を法令に従って粛々と続けていた。「飼えない」「うるさく吠える」「咬まれた」など、飼い主の身勝手な理由や無責任な弁解によって捨てられる現実に胸を痛める。誰かがやらなければならないと割り切りつつも、罪もなく死に追いやられる悲しげな姿や声に悩み苦しむ牧田だ。
同僚で行政獣医の幡枝亜紀(戸田恵梨香)は病院に通院し、精神安定剤が手放せない。作業班の志賀悟(渋川清彦)は犬がしゃべる悪夢にうなされる。
ある日、行政獣医の高野綾子(田中裕子)がセンター所長に赴任する。牧田らに「犬と猫に全部、名前を付けて!」、トリマーに「動物たちをもっときれいに!」と命じる。背中を押されるように、牧田たちは殺処分を減らせないかと奮起する。
動物たちを救うために獣医になったはずだ!助けられる小さな命に手を差し延べられないのか!過酷な現実を前に一歩ずつ再生への道を探ろうとするが、行政獣医たちの無力感、苦悩、葛藤は日々深まる。やがて大きな決断と選択を迫られる・・・。
3割の5万頭は引き取られるが、7割の10万1,300頭は殺処分に!
一般社団法人ペットフード協会の発表(平成26年)によれば、全国で飼われている犬と猫は、およそ2,031万頭(犬1,035万頭、猫996万頭)と推計されている。
そのうち、1年間に自治体の保健所や動物愛護センターなどに引き取られるのは、およそ15万1,000頭(犬5万3,000頭、猫9万8,000頭)だ。
犬は飼育放棄されたり、迷子になった所有者不明の成犬が多く、猫は所有者不明の幼い猫が多い。自治体に引き取られた後、飼い主へ返還されたり、新たな飼い主に譲渡されたりして、かろうじて生き伸びる。
返還・譲渡される割合は、昭和54年は112万頭のうちの1.6%(犬1万8,000頭、猫100頭)、平成16年は42万頭のうちの7.0%(犬2万5,000頭、猫4,000頭)、平成26年は5万頭のうちの33.1%(犬3万2,000頭、猫1万8,000頭)と年々増加しているのは、せめてもの救いだ。
しかし、保健所や動物愛護センターなどに引き取られたおよそ15万1,000頭(犬5万3,000頭、猫9万8,000頭)のうちの約7割に当たるおよそ10万1,300頭(犬2万1,600頭、猫7万9,700頭)は、自治体の予算、収容力、保護期限などを理由にやむなく殺処分されている重い現実は変わらない。
殺処分は、総理府の告示「動物の殺処分方法に関する指針」に定められ、二酸化炭素で昏睡させた後、自発呼吸を停止させて窒息死させる方法が執られている。決して安楽死ではない。