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本当に被ばくが原因? あらためて考える『美味しんぼ』雁屋哲氏の“鼻血問題”

『鼻血問題』に関して対談する雁屋哲氏(左)と西尾正道医師(右)

 東京電力福島第一原発事故から5年が経った。いまだ論議される健康被害のなかでも、象徴的だったのがいわゆる“鼻血問題”だ。

 累計1億冊を超える漫画『美味しんぼ』2014年4月28日発売の『ビッグコミックスピリッツ』誌に掲載された「福島の真実」というシリーズが社会に大きな波紋を呼んだ。
 
 福島県を取材し帰京した主人公が、原因不明の鼻血を出したり、疲労感を覚えたりする……といった鼻血の描写に対し、掲載後、何万というクレームが殺到したのだ。

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 原作者である雁屋哲氏は、騒動がひと段落するまで沈黙を保ち続け、2015年2月に『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』を発表。さまざま批判や反響の裏側、自身の体験について記した。

田村淳さんは自身の体験を語るがすぐに謝罪

 鼻血問題については今年1月、日刊スポーツの連載で掲載された「原発問題。都合の悪い歴史こそ残そう」で、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんの次のコメントによって再び話題を呼んだ。

 「実はボクも北茨城に行った次の日、朝起きたら、こんな量がでるのかってくらい、吐血!?って思うくらい、布団が鼻血まみれになっていたことがあったんです。北茨城に行って興奮していたのか、いきなり線量高いのに当たってそうなったのか、それはわからない…。今となっては調べようがないですからね。でも、だからこそ『美味しんぼ』のような話も、ボクはなくはないと思っていたんです。」

 大きな反響を巻き起こしたが、田村淳さんはその後、同紙上で「この鼻血の表現の部分について、不確定な要素がありながら誤解を招くような表現をしてしまった」と謝罪を表明。いまだに“鼻血問題”がデリケートなテーマであることが露呈した。

 この“鼻血問題”とは何だったのか? 2015年12月23日、一橋大学での講演「福島への思い★美味しんぼ『鼻血問題』に答える」では、雁屋氏の対談相手として北海道がんセンター名誉院長の西尾正道医師が登壇。二人は実体験を交えながら、医学的な考察を語っている。

鼻血は本当に出たのか?

 取材のため福島に2年通ったという雁屋氏は、次のように語っている。

 「福島での取材時、食事中に止めどなく出てきて、ティッシュの箱半分の紙を使いました。福島に行ってからというもの、疲労感もすさまじく2時間仕事をすると、それ以上続けられないといった状態。体調が落ち着いたのは福島を離れてずいぶん後になってからです。こんなことは初めてでした」

 雁屋氏の証言に対し、西尾医師はこうコメントした。

 「3.11の後、北海道がんセンターで1000人ほど内部被ばくを診ました。子どもを連れてきたお母さんが言うんです。『子どもが喉を痛がるし、鼻血が出る』とね。現実に事故直後、それまで鼻血を出したことのない多くの子どもが、鼻血を出しました」

 「たとえば、福島県伊達市の保原小学校の『保健だより』には『鼻血を出す子が多かった』と通知されています。また『DAYS JAPAN』の広川隆一氏がチェルノブイリで25000人以上の避難民を対象にアンケートしたところ、5人に1人が鼻血を訴えたと報告している。そうした実例を知っていたので、“鼻血”へのバッシングに対して『いったい国や行政は何を言ってるんだ』と思いました」

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