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【シリーズ「生活保護受給者のギャンブルは許されるか?」第1回】

税金の“フリーライダー”? 差別を助長!? 別府市が「生活保護受給者」のギャンブルに介入

生活保護受給者のパチンコは許される?monotoomono / Shutterstock.com

 生活保護受給者のパチンコは是か否か──。地方都市を発端として巻き起こったその議論は、そもそも生活保護における「最低限度の文化的生活」とは何か、という命題にまで広がっている。

 1月22日、大分県別府市の長野恭紘(やすひろ)市長は、市内のパチンコ店や市営競輪場を訪れている受給者を対象に、調査や指導を強化する方針を明らかにした。担当ケースワーカーを増員して体制を強化することも検討。

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 長野市長はその理由について、「ギャンブルは最低限度の文化的生活を送るために必要なのだろうか。市民感情、国民感情に照らし合わせても、理解を得られない」と語った。これに関して、ネットや報道ではさまざまな賛否の声が交わされた。

 実はこれに類する問題は、すでに2013年に兵庫県小野市で持ち上がっている。生活保護受給者に対する公的監視制度の条例案の制定に際し、日本共産党の市議や国会議員は反対質疑を行い、「受給者からささやかな楽しみを奪い、弱者への差別を助長する危険性もある」と指摘していたのだ。

憲法で定められた生存権を実現するための制度

 生活保護制度の根拠になっているのは日本国憲法第25条。「国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という条文である。この憲法によって保証される生存権を実現するための制度のひとつとして制定されたのが生活保護法。

 今回の論議は、生活保護受給者のパチンコや競輪、競艇、競馬をはじめとするギャンブルは、「健康で文化的な最低限度の生活」に必要なのかが問われているといえる。

 確かに、少なくない生活保護受給者が、生活保護費が入るとすぐにパチンコ店に入り、保護費を使い果たしてしまっているという現状は、受給者の生活の向上や社会復帰という観点からも、また生活保護費が税金から賄われているという点からも好ましいことではないだろう。

 だが、気をつけたいのは、パチンコをはじめとするギャンブル自体は、あくまで法律で認められている遊戯であるということ。一般の人はパチンコなどのギャンブルをしてもいいが、生活保護受給者は許されないというのは、受給者に対する偏見と差別が土台にないとは言いきれないのではないだろうか。

 パチンコの有害性が問題だとするなら、受給者対象に限らず、広くパチンコそのものの規制や廃止を唱える方が筋に叶っているような気もする。

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