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【シリーズ「DNA鑑定秘話」第28回】

DNA鑑定秘話〜ハンカチに付着した100年前のプレイボーイの精液からDNAを検出

詩人・作家のガブリエーレ・ダンヌンツィオ(1863〜1938年)

 ガブリエーレ・ダンヌンツィオ(1863〜1938年)は、イタリア歌曲の天才フランチェスコ・パオロ・トスティが作曲した「暁は光と闇とを分かつ」の作詞者として知られるイタリアの詩人・作家だ。余程の歌曲通でなければ、ダンヌンツィオを知る人は少ないだろうか?

 ムッソリーニに先駆けてファシスト運動を主導したり、奇想天外なビットリアーレ博物館を創設したり、三島由紀夫が著した『岬にての物語』や楯の会の行動に影響を与えた怪人物だ。だが、ダンヌンツィオは、女優エレオノーラ・ドゥーゼとの浮名を流すなど、イタリア社交界きってのプレイボーイぶりのほうがポピュラーかもしれない。

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 そんなイタリアの伊達男、ダンヌンツィオを彷彿とさせるニュースが届いた。

1世紀前の精液班から精子DNAを検出!

 2015年3月13日、AFP通信の報道によれば、イタリアの法医学専門家チームは、国民的英雄ダンヌンツィオが100年前に愛人に贈ったハンカチに残っていた精液斑を分析し、その精子DNAを採集したと発表。遺体を掘り出さずに、故人の精子DNAの検出に成功したのは世界初の快挙だ。この鑑定技術は、迷宮入り事件などの解明に役立つのではと注目されている。

 1916年、53歳のダンヌンツィオは、伯爵夫人オルガ・レビ・ブルナーと道ならぬ一夜の性愛に溺れた。その愛のメモリーを残そうと、伯爵夫人に贈ったのが、何と精液が付いた1枚のハンカチだった!

 サルデーニャ島南部にあるイタリアの一大水産都市・カリアリ。地元警察の委託を受けた法医学専門家チームは、ビットリアーレ・デリ・イタリアーニ財団が保管していたハンカチ、侯爵夫人がダンヌンツィオに宛てた手紙、象牙製の歯ブラシを分析した。

 法医学専門家チームは、ハンカチに付着していた肉眼では見えない微小の精液斑を、科学捜査用ライトのALS(励起光源)を使って検出。精液斑のDNAとダンヌンツィオのひ孫のDNAを比較・分析し、精液斑にダンヌンツィオの精子DNAを確認した。

 ALS(励起光源)は、光源にLED(発光ダイオード)を使い、可視光線、赤外線、紫外線が出す光(電磁波)の周波数(355~900nm)を照射することによって、肉眼で見えない指紋、血痕、性液のほか、毛髪、繊維、打撲痕などの痕跡を可視化する最先端・高感度の光学検査システムだ。米国のFBI(連邦捜査局)をはじめ、欧米各国の警察、日本の警察庁や警視庁で活用され、科学捜査に大きく貢献している。

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