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【連載「更年期をのりこえよう!」12回】

「更年期」は「エストロゲン」の減少で「メタボ」になりやすい

更年期に入ったら適度な運動を!shutterstock.com

 女性ホルモンであるエストロゲンは、血圧やコレステロールの調整をするだけでなく、血糖値の上昇を抑える働きもしている。

エストロゲン減少で糖尿病リスクが上昇

 食後に血糖値が上昇すると、膵臓のランゲルハンス島β細胞からインスリンが分泌される。インスリンは血糖値を下げるホルモンだが、エストロゲンにはインスリンの効能を高める働き(インスリン感受性という)があるのだ。このため、更年期に入ってエストロゲンの分泌が減少すると、インスリンが効きづらくなり(インスリン抵抗性という)、血糖値が上昇して、糖尿病のリスクが高まるのである。

 しかも、エストロゲンには「内臓脂肪」を代謝させて、つきづらくする働きがある。中年に差しかかると男女を問わず代謝が落ちるため、脂肪を蓄積しやすくなるが、エストロゲンの分泌が減少する更年期以降の女性は、特に「内臓脂肪」がつきやすくなるのだ。

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脂肪には「内臓脂肪」と「皮下脂肪」があるのをご存知だろうか?「内臓脂肪」とは腹筋の内側につく脂肪のことである。内臓の周囲につくため、体表からは摑むことができない。筋肉の占める割合が高い男性につきやすいが、筋肉が内臓脂肪をエネルギーとして利用するため、運動によって落としやすい。

 これに対して「皮下脂肪」とは、皮膚の下につく脂肪のことである。俗にお腹をつまんでブヨブヨなどと表現される脂肪はこちらであり、体表から摑むことができる。エネルギーの貯蔵や保温のために溜めこまれやすく、女性につきやすい。皮下脂肪は分解されにくいので落としづらく、腹部や臀部、大腿部につくと、お腹がポッコリしたり、お尻がムッチリしたり、太ももがデップリしたりするのである。

 閉経前の女性は、エストロゲンの作用で「内臓脂肪」より「皮下脂肪」の方がつきやすい傾向にある。しかし、エストロゲンという守護神を失う更年期以降になると、皮下脂肪より内臓脂肪の方がつきやすくなる。インスリン抵抗性は、内臓脂肪の量に比例し筋肉量に反比例するため、肥満かつ筋肉量の少ない女性ほど血糖値が上昇しやすくなるというわけだ。

 しかしながら、先に述べたとおり、「内臓脂肪」は「皮下脂肪」よりも運動によって落としやすいという特徴がある。更年期に差しかかったら、日常生活のなかに適度な運動を取り入れて、余分な内臓脂肪を燃やしていこう。


中年女性の5人に1人がメタボまたはその予備群

 メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型の肥満に、高血圧、脂質異常症、高血糖のうち2つ以上を合併した状態をいう。日本語に訳すと「代謝症候群」だが、今や「メタボ」で十分に市民権を得ている感がある。ここで、日本肥満学会によるメタボリックシンドロームの診断基準をおさらいしておこう。

①内臓脂肪の蓄積 
ウエスト周囲径 男性85cm以上、女性90cm以上
内臓脂肪面積にして、男女とも100c㎡以上に相当
②高血圧     
収縮期血圧 130mmHg以上 かつ/または
拡張期血圧  80mmHg以上
③脂質異常症  
中性脂肪150mg/dl以上  かつ/または 
HDL(善玉コレステロール) 40mg/dl未満
④高血糖     
空腹時血糖  110mg/dl以上
 
 厚生労働省は日本人の中年男性の2人に1人、中年女性の5人に1人がメタボリックシンドロームまたはその予備群と考えており、該当者の総数は約2000万人と推定している。

メタボリックシンドロームである人は、そうでない人と比べて心筋梗塞、脳梗塞といった心臓血管系の疾患に1.8倍かかりやすいという報告もある。女性が更年期に差しかかると、こうした疾患にかかるリスクが増すのは、メタボの3大要素である血圧、脂質、血糖のすべてを微妙に調整していたエストロゲンという強力な後ろ盾を失うからなのである。エストロゲンがいかに女性の健康を守ってきたか、おわかりいただけたのではないだろうか。

連載「更年期をのりこえよう!」バックナンバー

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