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【シリーズ「DNA鑑定秘話」第26回】

逆転無罪!鹿児島・強姦冤罪事件でも繰り返された当局のずさんなDNA型鑑定

またもや杜撰なDNA型鑑定が冤罪を生んだ(写真はイメージです/裁判所のHPより)

 去る1月12日、鹿児島県警や検察のDNA型鑑定のあり方を厳しく批判する判決が下った。

 福岡高裁宮崎支部は、鹿児島県鹿児島市で、2012年、当時17歳だった女性に暴行したとして強姦罪に問われた岩元健悟さん(23歳)の控訴審判決において、懲役4年とした鹿児島地裁の判決を破棄し、逆転無罪を言い渡したのだ。

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 そして1月26日、上告期限を迎えた福岡高検は、最高裁への上告を断念すると発表。岩元さんの無罪が確定した。

逆転無罪、県警や検察のDNA型鑑定のあり方を厳しく批判

 強姦冤罪事件、2012年10月7日午前2時過ぎ、鹿児島市内のアスファルトの路上で起きた。被害者は17歳の女性。強姦罪の容疑で逮捕・起訴された岩元さんは、鹿児島地裁の第一審で「酒に酔っていて記憶がまったくない」と無罪を主張。

 鹿児島県警は、女性の胸から検出した唾液と思われる付着物と膣内から検出した精液のDNA型鑑定を行い、「唾液は、岩元さんのDNA型と一致、精液から抽出されたDNAは微量のため、鑑定できなかった」と発表した。

 2014年2月、鹿児島地裁は、唾液のDNA型の一致、女性の証言を重視したうえで、「精液が検出されたことは、男性に暴行されたとする被害者の証言を強く裏付ける」と主張し、岩元さんに懲役4年(求刑懲役7年)を求刑した。

 だが、弁護側から再鑑定の請求を受けた福岡高裁宮崎支部は、日本大学の押田茂實名誉教授(法医学)に精子のDNA型鑑定を依頼。押田氏は、日本の法医学鑑定の第一人者だ。

 2015年1月12日、福岡高裁宮崎支部の控訴審が開廷、弁護側は「アスファルトの路上で暴行されたのに、女性は負傷していない」ことから、証言に信用性はないと主張した。

 岡田信裁判長は、次のように証言の信用性を否定。

 「再鑑定の結果、女性の膣内に残存していた精子から、岩元さんと別人のDNA型を検出した。そのDNA型は、女性が当時はいていたショートパンツから検出されたDNA型とも一致した。女性は虚偽の証言を述べている。精子は別人のもので、強姦の事実を認定するに足る証拠はない」

 一審判決を破棄、岩元さんに逆転無罪を言い渡した。

 ちなみに、検察側も独自に再鑑定を実施したが、鑑定資料を裁判所に無断で使ったため、却下されている。

 また、岡田裁判長は「鹿児島県警は、鑑定後に残りのDNA溶液を廃棄し、精液の鑑定経過を記録したメモも廃棄した。鑑定技術が著しく稚拙で不適切な操作をしたため、DNA型を検出できなかった」と批判。

 「鹿児島県警は、DNA型を検出したにもかかわらず、岩元さんのDNA型と照合せず、事実でない報告をした可能性が強い」と、鑑定の信用性への疑念を強調した。

 さらに、女性の証言は「直近の性交の事実について虚偽を述べ、秘匿したと考えられる。強姦とみるには不自然。合意を得て性的接触した後にトラブルになり、男性が逃げ出したとみた方が自然」と指摘した。

鑑定結果の改竄、恣意的な隠蔽が強姦冤罪事件の温床

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