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【「おなら」と「げっぷ」のマジメなサイエンス【前編】】

なぜ「おなら」は臭い? 我慢し続けるとどうなる? 放屁の速度は時速約12キロ!

屁は燃えるので火気厳禁!?(shutterstock.com)

 「人間は考える葦である」と言ったのはブレーズ・パスカルだが、「人間は、しょせん一本の管である」と言い放ったのは誰か? 作家の山口瞳だ。雑誌『週刊文春』に連載していた「山口瞳のマジメ相談室」の1967年7月10日号の記事を見ると、25歳の主婦から切実な相談が寄せられる。山口がマジメに答えているのが可笑しい。

 主婦:結婚して2年、二人でいるときに平気でおならをするのが困ります。やられるたびにむしゃくしゃします。パンツを汚すのも困ります。平気な顔をしてパンツを洗濯籠にほうりこんでいきます。つくづく、男性はまるで子供で横暴な動物だと思うと、なさけなく腹が立ちます。どうしたらいいでしょうか?

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 山口:人間は、しょせん一本の管です。食べて排泄する管を持つ動物です。管の片端が汚れるのも致しかたのないことでしょう。そう思ったら、汚れたパンツを洗うのは割合平気になるんじゃありませんか!

 夫は一本の管と思えば、百年の恋も冷めるかも? 人間は、口から肛門に向かって、穴が貫通している一本の管だ! 口から挿入した胃カメラと肛門から挿入した大腸カメラは、小腸辺りでお見合いするはずだ! そんな空想に耽りながら、「おなら」と「げっぷ」をしばし科学的に考えてみよう。
 

おならの成分の90%は、ほぼ無臭

 まず、おならの出る仕組みから。食事をすると、空気が食べ物といっしょに口と鼻から吸い込まれ、胃を通して腸に入る。食べ物は、腸の中で消化・吸収されるので、窒素、二酸化炭素、メタン、水素などが発生する。その時、体外から入ってきた空気が混じり合って、おならというガスの素になる。

 つまり、おならの成分は、窒素、二酸化炭素、メタン、水素などが70%、血液が体内を循環していくプロセスで作られる血液中の二酸化炭素が20%。これらの成分の90%は、ほぼ無臭だ。

 残りの10%は、食べ物が消化・吸収された後の残りカスを大腸の腸内細菌(悪玉菌)が分解・発酵・腐敗する時に生じる。インドール(大便臭)、スカトール(糞尿臭)、アンモニア、硫化水素(腐卵臭)などの悪臭のある腸内ガス。それが、臭いおならの正体だ。

 もう少し、詳しく言えば、胃・十二指腸を通り、小腸上部で消化・吸収されなかった食物繊維、タンパク質などの食べ物の残りカスは、小腸下部や大腸で腸内細菌(悪玉菌)の働きによって分解され、悪臭性の強い腸内ガスに変質する。

 腸内ガスのほとんどは、腸管壁から血液中に吸収されるが、吸収されない腸内ガスは、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)によって直腸を通って肛門から、おならとして出る。蠕動運動は、腸内の平滑筋、縦走筋、環状筋が弛緩・収縮を繰り返しながら、大便やおならを順次押し出す不随意運動。おならなのか、大便なのかを判断するのは、直腸の末端神経だ。だが、軟便や水分が多い便には、末端神経が誤った判断を下して、排便する場合もあるが、おならは、体内の有毒ガスを体外に排出する生理現象、大切な調節弁であるのに変わりはない。

 成人なら、食後6〜7時間後を目安に、1日平均0.5~1.5ℓのおならを5〜20回にわたって放屁(ほうひ)する。その速度は、時速約12キロ(約3時間30分でフルマラソンを走るスピード)。その温度は、ほぼ体温の37℃。ちなみに、おならには、水素、メタン、硫化水素などの可燃性ガスが含まれることから、ライターの火炎を近づけると燃えることがある。だが、有毒な二酸化硫黄が発生したり、爆発、火傷、衣服への引火などの危険性があるので、決して試してはいけない!!

おならをガマンするとどうなる?

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