「認知症に備えるアプリ」はNPO法人オレンジアクトのホームページからダウンロードできる
今年8月、東京・大田区などの都心エリアを中心に、第三者評価で認知症の疑いの有無がチェックできる「客観式認知症疑いチェックアプリ」(配信名称は「認知症に備えるアプリ」)の無料配信が始まった。
感度93.9%、特異度82.1%と、信用度の高いチェック内容で、区によっては地域包括支援センターとの連携も可能だという。行政側も、このアプリによって認知症高齢者らの情報管理が行えるようになる。
[an error occurred while processing this directive]アプリの仕掛け人は、軽度の認知障害の段階での対応を推進し、認知症発症の抑制・予防のための情報などを提供してきたボランティア団体「NPO法人オレンジアクト」と、後見人紹介サービス事業を行う「一般社団法人あなたの後見人」。訪問診療で多くの認知症老人に接してきたオレンジアクト理事長で医師の髙瀬義昌氏が、東京大学特任助教の五十嵐中氏と協力して研究開発を行い、アプリの開発に必要な情報については大田区の3医師会が提供した。
早期発見で認知症の症状は改善する
厚生労働省が今年1月に発表した推計値によれば、2025年に認知症を罹患する高齢者の数は700万人を超えるという。実に65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症となる計算だ。髙瀬氏によると、とりわけ深刻なのは認知症を患った“独居老人”の生活状況だという。
アプリを開発したオレンジアクト理事長で医師の髙瀬義昌氏
「診療に訪れてみると、ゴミタメのような家にひとりで住んでいる老人がたくさんいる。しかも、ほとんどの人が介護保険にすら入っていない。認知症もどんどん進行して、そのうち家で糞尿にまみれて倒れていたり、骨折してしまったり……。しかし、このようなケースだけではない。認知症の症状を引き起こす病気は70種類以上あるとも言われており、中には早期発見して早期対応をすれば治療可能な病気もある」
高齢の認知症患者のひとり住まいは、確かに危険だ。だが、髙瀬氏と同じくオレンジアクトの理事長を務める倉橋絢也氏は、症状の早期発見さえできれば、認知症患者がひとりで生活することも十分可能だと力説する。
「認知症患者がひとり暮らしをするのは、正直、難しいですが、可能か不可能かと言われればもちろん可能です。なぜなら、認知症の初期段階は、進行抑制ができるからです。そのためには、医療、介護の連携が必要です。そして町ぐるみで取り組んでいく上でも、ご家族の方、近隣の方が、認知症の発症を早期に発見することが重要なんです」
倉橋氏も「よく認知症は治らないといわれますが、それは中核症状のこと。周辺症状は治癒することもあり、それを緩和することによって、ひとり暮らしも十分可能です」と同調する。