赤ちゃんの脳の重さは5歳頃に成人とほぼ同じ1300〜1400gになる(shutterstock.com)
人間の脳は数千億個もの神経細胞(ニューロン)の集合体だ。ヒトデのような星型をしたニューロンに入った刺激(情報)は、電気信号に変換されて伝達される。ニューロンは、細胞核をもつ細胞体、他のニューロンからの入力を受け取る樹状突起、他のニューロンに出力する軸索の3つの部分から成り、樹状突起と軸索を合わせて神経突起とも呼ぶ。
1個のニューロンは、数千〜2万個ものシナプスをもっている。ニューロンとニューロンの間にある、ごくわずかなすき間をシナプスと呼び、神経伝達物質を放出して情報を伝達している。シナプスが放出する神経伝達物質は、ニューロンで作られる化学物質で、アセチルコリン,アドレナリン,ドーパミン,セロトニン、オキシトシンなどがある。
[an error occurred while processing this directive]このシナプスの情報伝達の仕組みをもう少し科学的に説明すると、刺激(情報)から変換された電気信号が軸索末端までくると、シナプス小胞という袋が破れて、神経伝達物質が放出される。その結果、隣り合ったニューロンの受容体(レセプター)が結合して情報が伝達される。
ニューロンとシナプスの数が増えると脳が重くなる!
赤ちゃんの脳は、お母さんのお腹の中で成長し、ほぼ成人と同じ形や機能をもっている。ただ、感情・注意・思考などの精神の働きや随意運動をコントロールしている前頭葉が成長途上にあるために、シナプスの密度はまだ高くない。
赤ちゃんの脳の重さは、生誕直後でおよそ400g、8ヶ月でおよそ600g、3歳でおよそ1200g。5歳頃に成人とほぼ同じ1300〜1400gになる。
次第に脳が重くなるのは、なぜか? ニューロンやシナプスの数が増えたり、髄鞘化(ニューロンの腕の部分の軸索が鞘に包まれて、情報をより速くやり取りできるようになること)が関係しているからだ。ニューロンは、数が増えるとともに、その性質も変化する。これが、ニューロンの腕の部分の軸索の周りが鞘に包まれ、情報伝達のスピード速くなる髄鞘化という現象だ。
このように、赤ちゃんの脳は、生後もニューロンやシナプスの増加や髄鞘化によって、重さが少しずつ増えて、成長しているのだ。
米国シカゴ大学の小児科医、ピーター・ハッテンロッカー教授の研究によれば、シナプスの数は、1人歩きや言葉を覚える1〜3歳頃にピークを迎え、その後は少しずつ減少することが分かってきた。この現象を「シナプスの過形成と刈り込み」と呼ぶ。