“景気”と“顔の造作”の相関とは? 人工知熊/PIXTA(ピクスタ)
俗に「しけた面(ツラ)」といえば、ぱっとしない雰囲気を指す。ちなみに“しける”とは暴風雨で海が荒れるという意味の「しけ」を動詞化したもの。風雨で海が荒れること、さらに海が荒れて不漁であることを意味することが転じ、不景気であることや金回りが悪いことを意味するようになった。
さて、この「しけたツラ」を、アメリカの心理学者であるテリー・F・ペティジョン2世が「不景気な顔」と「景気のいい顔」について具体的に研究した。興味を引くのは、分析した題材がグラビア写真だったことだ。
[an error occurred while processing this directive]ペティジョン2世は1999年、「環境保障に関する仮説」という論文を発表した。その仮説とは、「米国では“景気”と“顔の造作”(人気モデルや女優、歌手)には相関がある」というものだ。
それによると、不景気なときには「安心感」をもたらす顔が人気になるという。キーワードは、独立心、力強さ、専門的、成熟、支配的、悪賢さ……。
具体的にいうと、「面長」「目が小さい」「顎が尖っている」のだという。こういう顔が、「不景気をものともしない頼れる女性」とアメリカ人は感じるらしい。
一方、景気がいいときには「若々しさ」が人気になる。キーワードは、ナイーブではない熱気、やさしさ、無邪気さ、誠実さ。具体的には「ぽっちゃり顔」で「大きな目」、「ふっくらとした頬」、「なだらかな顎」だという。
女性ヌード写真を分析し仮説は実証されたが……
ペティジョン2世は2004年、この仮説を裏付ける研究を行い発表した。有名男性誌『PlayBoy』のグラビア写真を40年間(1960~2000年)分、分析したのである。同誌のグラビアはご存じのとおり、“プレイメイト”と呼ばれる女性のヌード写真(同誌は2016年3月からヌード写真掲載を止めると発表している)だ。
この研究で、彼の仮説は見事立証され、景気が悪いときには、面長で、目が小さく、顎の尖った顔に人気があり、景気がよいときには、ぽっちゃり顔で、目が大きく、頬がふっくらし、なだらかな顎が、人気になることがわかったという。
だが、顔の研究なのに、なぜヌード写真を分析したのか? さらには、女性の顔だけ分析したのか? という疑問が残る“トンデモ研究”だという気がしないでもない。
名誉挽回のためなのか、ペティジョン2世は2014年、今度は別の雑誌を分析して結果を発表。音楽雑誌『ビルボード』ランキングにおけるレコード(CD)売り上げ数と、ラジオオンエア数のトップを飾ったグループミュージシャンを1946~2010年まで分析したのだ。
今回は、女性ばかりでなく男性の顔も分析。その結果、やはり仮説と同様な結果が得られたという。こうして、ペティジョン2世の15年に及ぶ研究に、終止符がうたれた(と思われる)。