実際に睡眠不足と風邪には関係が Miya/PIXTA(ピクスタ)
睡眠不足は健康を崩し、さまさま病気を引き起こす原因のひとつであるのはご承知のとおり。今回、睡眠不足で体力が低下しているときは、「実際に風邪を引きやすい」ということが、新たな研究で判明。この知見は『Sleep』(9月号)に掲載された。
この研究の筆頭著者で米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)助教授のAric Prather氏は、「免疫系に対する睡眠の役割は十分に立証されているが、完全には解明されていない」とコメント。今回の研究は、睡眠不足が風邪の原因になると裏付けるものではないが、免疫系の働きや慢性疾患の発症リスクと睡眠の関連を示した既存研究の結果に通じるものだという。
[an error occurred while processing this directive]一晩眠らないと免疫系の伝達物質に明確な変化
Prather氏によると、動物やヒトの研究において、「健康な人が(一時的に)一晩全く眠らないと、血液中の免疫細胞の種類や、免疫系の伝達を補助する細胞から放出される化学伝達物質の種類に、きわめて明確な変化がみられる」ことが示されている。
米国疾病管理予防センター(CDC)も睡眠不足の「蔓延」に懸念を示している。米国立睡眠財団(NSF)の最近の調査では、アメリカ人の約2割は1日の平均睡眠時間が6時間未満であることが示されている。
今回の研究では、2007~2011年に2カ月間の健康診断を受診したピッツバーグ在住の健康な被験者164人(18~55歳)を対象とした。まず、「風邪ウイルスに曝露する」前の1週間にわたり、被験者の普段の睡眠パターンを監視。その後、全被験者を5日間ホテルに隔離して「風邪ウイルスの含まれる点鼻液」を投与した。
その結果、1日の睡眠時間が7時間以上であったグループに比べ、6時間未満のグループは、風邪になるリスクが4.2倍、5時間未満のグループは4.5倍だった。
研究の実施時期、体重、所得、学歴、ストレスレベル、喫煙、運動、飲酒などの因子を考慮しても結果は変わらなかったという。また、今回の研究では人工的に睡眠時間を減らすのではなく、従来の睡眠パターンを追跡していることから、強い科学的根拠があると研究グループは付け加えている。