BMI20未満は考えもの? sanae/PIXTA(ピクスタ)
最近、若い女性の極端な「スリム志向」が問題視されている。中年男女でも、健康的で若々しく見えるスレンダーな体型を維持したいと思っている人は多いだろう。
健康に関する多くの話題で「メタボ」が取り沙汰されるように、肥満のほうが多くの生活習慣病の元凶とされている。従来そこには「認知症」も含まれてきた。中年期の肥満と関係の深い糖尿病や高血圧、高脂血症といった生活習慣病が、老後の認知症のリスクを高めることは通説となっているからだ。
[an error occurred while processing this directive]しかしこの春、常識を覆すような驚きの研究結果が発表された。ロンドン大学公衆衛生学のNawab Qizilbash教授らの研究グループによると、中年期(45~66歳)に「BMIスコア20未満」の痩せた人は、アルツハイマー型認知症にかかるリスクが高くなるというのである。
太っているほうが認知症にならない?
BMIとは、体重(kg)÷身長(m)の2乗で計算される肥満指数。日本肥満学会の基準では18.5未満が「低体重」、18.5以上~25未満は「普通体重」、25以上は「肥満」とされている。この基準で行けば「BMI 20」は普通体重に分類される。たとえば身長が170cmなら体重57kg程度、160cmなら51kg程度が目安だ。
研究グループは、BMIと認知症発症のリスクの関係について、20年間にわたり約200万人を対象に調査。平均年齢は55歳(45~66歳)、平均追跡期間は9.1年で、BMIスコアの平均は26.5だった。
調査開始後9年間で、4万5507人が認知症を発症。BMIが20~25の普通体重の範囲にいる人と比べると、BMIが20以下の痩せ気味の人・低体重の人は、認知症になるリスクが34%も高かったという。
さらにBMIのスコアが上がるほど認知症の発生率は減少。そして何とBMIが40以上という重肥満の人については、普通体重の人と比べて29%も発症リスクが低いという結果が出た。この傾向は、追跡期間中の20年で変わらなかったという。またこの調査に関しては、飲酒や喫煙による認知症への影響はほとんどないことも報告された。こちらも通説とは逆の意外な結果だ。
身体の痩せは脳の痩せに繋がる?
ただし研究者らは、「今回BMIスコアが高いほど認知症リスクが下がる結果が出たが、これは決して過度に太ることを推奨しているわけではない。なぜこのような結果になったかは、さらに研究を進める必要がある」と述べている。
確かに過去には、BMI 25~30の「小太り」の人が最も死亡リスクが低かったという米疾病対策センターの調査報告もある。もし今回の結果のようにBMIが高いほど認知症リスクが下がる原因を発見できれば、認知症の新たな治療法を開発できる可能性がある。
一方で、BMIスコアが低い人の中には無理なダイエットを繰り返しているような人も多く、偏った食生活や過度な運動が身体に悪影響を与えていることも考えられる。やはり肥満指数と認知症の関係については、さらなる研究が必要になってくるだろう。
いずれにせよ中年期の痩せすぎは、脳の健康を損ねるリスクを上げる可能性があるということ。行きすぎた美容志向に走ることなく、身体が欲しがるものを適度に食べて健康的な体型を維持することも、認知症の予防には大切なのだ。
(文=編集部)