労働環境に左右される恋愛事情? ドラマ「医師たちの恋愛事情」HPより
フジテレビの連続ドラマ「医師たちの恋愛事情」が評判だ。熱血外科医を演じるのは、いま最もセクシーな俳優といわれる斎藤工。大学病院を舞台に、医師たちが「秘密」を抱えつつ、出世争い、恋愛、不倫、三角関係などの欲望が渦巻く「医療ラブストーリー」。
斉藤が魅かれる女性医師を演じるのは石田ゆり子。仕事を最優先にした結果、結婚適齢期を逃した42歳の独身外科医。ほかにも、シングルマザーや不妊治療中の女医も登場。「女性が仕事を全うしつつ、幸せな結婚生活や子どもを持つことの難しさ」を実感する女医たちの姿も描かれる。
[an error occurred while processing this directive]世間では「女医」が花盛りだ。テレビ番組では女医タレント、雑誌の読者モデルが活躍している。「第47回ミス日本コンテスト2015」では、東大医学部医学科3年生が準ミスには輝いた。
男性医師中心だった医療現場でも、女性医師の姿が目立つようになってきた。いまや大学医学部の学生は、3分の1が女性。医師国家試験合格者の女性率は、ここ数年31~35%で推移している。厚生労働省によると、医師全体に占める女性の割合は約2割だ。
少数の勤務医が長時間勤務でカバーしているという実態
高収入の職業というイメージがある医師だが、病院の勤務医は激務だ。昼間は途切れることのない外来患者を診察しながら、入院患者も診て回る。休日でも呼び出し(オンコール)がかかり、夜間の当直勤務......。
勤務医の長時間労働は常態化している。全国医師ユニオンの調査(2012年)によれば、勤務医の約8割が当直明けの翌朝から通常の1日勤務に入るという。勤務医の労働時間は週70時間を超えるという、国立保健医療科学院の報告(2006年)もある。
その背景には、医師不足や経済的な理由から多数の医師を確保できず、少数の勤務医が長時間勤務でカバーしているという実態がある。
労働基準法の法定労働時間は1日8時間までだが、勤務医が日勤と当直を行うとこの制限を超えてしまう。そのため、病院側は行政の許可を受けた上で、「当直は"監視・断続的労働"」として法定労働時間の例外として、日勤・当直勤務を成立させている。
しかし、「ほとんど労働する必要がない」とされる監視・断続的労働も、実際には当直の間も通常と同じような業務が行われていることも少なくない。奈良県県立奈良病院の産婦人科医2人が、時間外手当の支払いを求めた訴訟の2013年の最高裁判決では、当直の実態は時間外労働だと認定。最高裁は県の上告が退け、県に対して割増賃金(超過勤務手当)の計約1500万円の支払いを命じた。
2013年4月に実施された「大学病院経営実態調査」では、「宿直中の診療に対する時間外勤務手当」を支払っている病院は約6割にとどまっているという。
「恋をしてもいいですか......」女医の3人に1人が未婚という現実
ドラマ「医師たちの恋愛事情」のキャッチコピーは「命を救う人間が恋に落ちてはいけませんか」。リアルな恋愛事情はどうなのだろう。
2012年の総務省「就業構造基本調査」を元にした職業別の生涯未婚率(50歳時点の未婚率)では、医師は男性がわずか2.8%に対して女性は35.9%。激務で家庭生活との両立が難しいという事情があるにせよ、女性医師の3人に1人が未婚という計算だ。
一方で、女性医師の多くは、出産などで一度職場を離れてしまうと、なかなか復職できないイメージを抱いているようだ。医系専門予備校「メディカルラボ」を運営するキョーイクによる調査(2014年)によると、女性医師の43.7%が結婚後の復職に不安を抱いているという。全国の現役医師300名を対象としたこの調査では、結婚後、医師生活を続けられるか不安(不安だった)と思っている人は全体で15.6%だったが、女性医師は43.7%という結果だった。
命を救う人間が恋に落ちてはいけませんか――。現実は、恋に落ちることができる労働環境の整備が先に必要なようだ。
(文=編集部)