高リコピンの"美肌トマト"登場か?
「体重が気になる」「忙しくて食事が偏り気味」――。そんなときにちょっとでも身体にいいものを摂ろうと、「栄養機能食品」や「特定保健栄養食品(トクホ)」が表示された食品を選ぶ人は少なくない。
だが、この2つの表示の違いをご存じだろうか。栄養成分と機能を明記できる「栄養機能食品」は国の許可は不要だが、対象が加工食品とサプリメントに限られる。
[an error occurred while processing this directive]一方「体脂肪を減らすのを助ける」など、踏み込んだ用途表示が認められているのが「トクホ」。こちらは生鮮・農水産物も対象になるが、国の許可を得るまでに時間と手間がかかることから、商品化に二の足を踏む企業が多かった。
そんな中、今年4月に「第3の制度」がスタートする。生鮮を含めた食品全般(過剰摂取が懸念されるアルコールなどは除く)について、企業や生産者の責任で「身体のどこにいいのか」「どう機能するのか」を具体的に示すことができる、新たな食品機能性表示制度だ。
同じような内容で市場が急成長した米国の制度にならい、経済活性化への起爆剤とするのが狙いだという。
身体のどこに良いかを表示できる
「トクホ」の取得には、製品そのものの臨床試験が必要だ。そのため、費用や時間の面で中小企業には大きな負担だった。しかし、新制度は食品や機能性関与成分の研究論文の分析結果(システマティックレビュー)があればいいため企業負担は少ない。
消費者の立場から見た新・食品機能性表示制度のポイントを紹介しよう。
●野菜、魚など生鮮食品も対象になる
生鮮食品などの農水産物でも、機能性を表示できる。機能性に関与している成分が特定でき、その効果を発揮する量を食べることができるのが条件。機能性成分の含有量を高めた「高リコピン・トマト」や「βグルカン高含有・大麦」などの開発も進んでおり、今後登場するだろう。
●体の「どこにいいか」が分かる
新たな機能性表示制度では、「体のどこの部位に良いのか」が記載できる。トクホで表示できるのは「歯」「骨」「お腹」だけ。これからは「目」「鼻」「ヒザ」「肌」などが加わり、それに対する機能性が表示される可能性がある。
●根拠となるデータが確認できる
機能性表示食品を販売する企業や生産者は、表示の根拠となる研究データやメカニズムを消費者にわかりやすい形で公開しなくてはならない。特定部位にどう効くのか、自分に適した効果や成分を確認できる。
鵜呑みは禁物!? 消費者も勉強が必要
今までサプリメントや健康食品の表示を「あいまいな表現で分かりにくい」と不満に感じていた人には、歓迎できる新制度。健康を意識して献立を考えている人にも「美肌トマト」や「目をサポートするホウレンソウ」が目にとまれば、食材選びの参考になるだろう。
しかし一方で、生産者からは「生鮮食品は産地や品種、生産者により有効成分の含有量のばらつきがある。制度の信用を傷つけるかもしれない」との声が上がっている。消費者団体も「根拠が不十分で効能だけをうたう商品が販売され、消費者がリスクを負わされる可能性も」という懸念の声がある。
特に安全面では、過剰摂取や他の成分との食べ合わせのリスクを消費者が把握できる体制作りが急務だ。消費者庁では企業や生産者に対し、医薬品との相互作用まで調べて、機能成分の定量化を行うなどの条件を課しているという。
新制度の下でどれほどの商品が市場に出回るかは、フタを開けてみないと分からない。確かなことは、消費者自身が受け身にならず、新たな情報を理解して選択する力が求められるということだ。
(文=編集部)