顎に違和感を感じたらチェックを急ぐshutterstock.com
成人の2人に1人が何らかの顎関節症といわれるが、この病気は予防したり、改善はできるのだろうか?
大阪歯科大学附属病院の覚道健治院長は、「まず筋肉や顎関節を安静にし、噛みグセを見直しましょう。噛みグセを治すには、例えば、右でばかり噛む人は左でも噛むように意識する。噛みしめや食いしばりが強い人は、仕事の休憩中でもできる簡単なアゴの筋肉体操や首や肩の筋肉ストレッチングを習慣づけることが大切です」と話す。
[an error occurred while processing this directive]筋肉や顎関節を安静にし、噛みグセを見直そう
就寝前に入浴して頬をよく温めた後の温湿布も有効だ。「食いしばらないで歯を離そう」「急に大きく口を開けない」「姿勢を正しく」と注意書きを目につく壁に貼っておくのもいいだろう。そこで簡単なアゴ体操と噛む行為に深く関係する首と肩の筋肉ストレッチング、さらには予防や改善のコツを伝授してもらった。
簡単なアゴの筋肉体操
❶口をリズミカルに開け閉めする
❷指で下アゴを押さえながら前に出したり、引いたりする
❸指で下アゴの右を軽く押しながら、アゴを右に動かす。左も行う
❹指で下アゴを押さえながら、口をリズミカルに開け閉めする
*「あごが痛い、口が開かない―顎関節症(NHKきょうの健康Qブック)」和嶋浩一監修より
首と肩の筋肉ストレッチング
❶手を添えながら、頭を前、左斜め前、右斜め前、後にゆっくりと倒す
❷肩をゆっくりと引き上げる。その状態を数秒間保ちストンと落とす。数回繰り返す。このサイクルを1日に数回行う。
*「あごが痛い、口が開かない―顎関節症(NHKきょうの健康Qブック)」和嶋浩一監修より
予防と改善のコツ
●右を向いて寝るクセがあれば左を向いて寝る
●高く硬い枕を避ける
●うつ伏せになって寝ない
●鞄を右肩ばかりにかける人は左肩にもかける
●こぶしを下アゴに軽く押し当ててあくびをする
●歯科治療の時間を短くする
●長時間の会話やカラオケを避ける
●フルート、サキソホン、バイオリンなどの演奏、格闘技やスキューバダイビングを控える
誰でも簡単にできる顎関節症セルフチェック
もし日常生活でアゴの不調が気になったら、簡単なセルフチェックをしてみる。
以下の設問に答えて、1は1点、2は2点、3は3点、4は4点として合計してみよう。
設問1
★口を大きく開いた時,人差し指から薬指を並べた3本指をタテにして入りますか?
1,すっと入る (1点)
2,ほぼ問題ない (2点)
3,どちらともいえない (3点)
4,やや困難 (4点)
5,全く入らない(5点)
設問2
★口を大きく開け閉めした時,アゴの痛みがありますか?
1,全くない (1点)
2,たまにある (2点)
3,どちらともいえない(3点)
4,しばしばある (4点)
5,いつもある(5点)
設問3
★口を大きく開いた時、まっすぐに開きますか?
1,いつもまっすぐ (1点)
2,たまに曲がる (2点)
3,どちらともいえない (3点)
4,しばしば曲がる (4点)
5,いつも曲がる(5点)
設問4
★干し肉,するめ,タコなど硬いものを食べると、アゴや顔が痛みますか?
1,痛まない (1点)
2,たまに痛む (2点)
3,どちらともいえない (3点)
4,しばしば痛む (4点)
5,いつも痛む(5点)
点数はあくまでも目安だが、すべての設問に答えて合計が8点以上なら顎関節症の可能性が高いので顎関節症専門医の診断を受けよう。また、日常生活でアゴに次のような違和感がある場合も顎関節外来など専門医の受診が勧められる。
スグわかる!顎関節症のセルフチェック
以下の項目に1つでも思い当たれば、顎関節外来でチェックを受けよう!
□アゴが痛い、口が開かない、カクカク音がして痛い。
□食事の時、アゴが痛くて噛めない。
□大きなあくびやリンゴの丸かじりができない。
□人差し指、中指、薬指の3本をタテに並べて口に入らない。
□口の開け閉めで、耳の回りに音(カクカク、シャリシャリ)がする。
□食べ物を噛んだり、長い間しゃべったりすると、アゴがだるく疲れる。
□耳の前やこめかみ、頬に痛みを感じる。
□最近、アゴ、首(頸部)あるいは頭を打ったことがある。
(大阪歯科大学附属病院院 顎関節外来パンフレットより)
一般的な治療費の目安(保険診療)としては、例えば急性の開口障害を伴うケースの患者の場合、10日間の通院で、MRI検査、CT診断、パンピング治療(関節腔に注射針を刺し、生理食塩水や局所麻酔剤の注入と吸引を繰り返すことで関節腔の関節可動域を大きくする)、スプリント調整(装具を歯列に装着し顎関節や筋肉への負担を軽減したり顎を整位したりする)、開口訓練などを行なった患者さんの負担金は3万6636円(大阪歯科大学附属病院の例)ほどです。
(取材・文=佐藤博)
覚道健治(かくどうけんじ)
大阪歯科大学附属病院院長、口腔外科教授
1974年、大阪歯科大学卒業、83年、大阪歯科大学口腔外科学第1講座講師、97年、大阪歯科大学口腔外科学第2講座教授、2001年、大阪歯科大学附属病院副病院長、08年、大阪歯科大学附属病院院長に就任。
日本顎関節学会(理事長2012年まで)、日本口腔リハビリテーション学会(理事長)、日本歯科医学会(理事)、日本口腔外科学会(理事)、日本歯科薬物療法学会(理事)、日本口腔外科学会(指導医,口腔外科専門医)、インフェクションコントロールドクター(ICD)。『口腔顎顔面疾患カラーアトラス』(2012年、永末書店)、『歯科臨床研修マニュアル起こりうる問題点と解決法』(同、永末書店)など。