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守ってくれるはずの免疫が自分を攻撃! "暴走する"恐ろしい病気たち

アレルギーは免疫システムの過剰反応 mana/PIXTA(ピクスタ)

 花粉症の季節がすぐそこまで来ている。耳鼻咽喉科医とその家族の約1万5000人を対象とした全国調査では、1998年は16.2%だったスギ花粉症の人が2008年には26.5%に急増。スギ花粉の量が増えたこともあるが、日本の人口と照らし合わせると、実に3300万人がスギ花粉症ということになる。これは、もはや国民病といえるだろう。

 人体には、細菌やウイルス、寄生虫、がん細胞など外部からの侵入者に対しその人の体を守るための免疫システムが備わっている。体内に張り巡らされたリンパ系をはじめ、骨髄で作られる白血球、胸腺で作られるT細胞、脾臓、扁桃、虫垂などが日々、侵入者を見張っているわけだ。

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 たとえば花粉症とは、体内に侵入した花粉を免疫システムが侵入者ととらえ、異物に対する抗体を作って侵入者を排除しようという反応だ。この免疫反応が過剰になると、くしゃみ、鼻水、涙などのアレルギー症状となる。

 花粉症のほかにも、アレルギーにはアトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、食物アレルギー、薬物アレルギー、ほこりや動物の毛に反応するアレルギーなどがある。全てが免疫の過剰反応が原因となって起こる。臓器移植をした際に現れる拒絶反応は、移植された臓器を免疫システムが「異物」と判断して攻撃をすることで起こる。

女性に多い"免疫の暴走"による病気

 

 本来は人体を守るはずの免疫システムが暴走して起こる病気は、アレルギーだけとはかぎらない。システム自体が正常に機能しなくなり、自分を攻撃してしまうことがある。自己免疫疾患だ。その種類は多く、症状も攻撃される部位によってさまざまだ。

 関節の痛みやこわばり、変形などの症状が現われる「関節リウマチ」。女性患者は男性の3~4倍もいる。甲状腺を攻撃される「橋本病」は、甲状腺ホルモンが減少することによって皮膚の荒れや体重増加、眠気などが起きる。ホルモン治療で症状は消失できる。

 20~30代で発症する人が多い難病、「多発性硬化症」も女性のほうが男性の3倍。なぜだか緯度が高くなるほど増える。この病気を患う人は年々増加しており、解明が急がれている。脳や脊髄、視神経などに病巣ができ、感覚障害、歩行障害、視力の低下、排尿障害などさまざまな症状がある。

 やはり難病の「全身性エリテマトーデス」は、関節や腎臓、皮膚、肺、心臓、脳、血液細胞などが損傷を受け、脱力感、疲労感、かゆみ、胸の痛みなどを引き起こす。別名「ループス」(ラテン語で狼の意)とも呼ばれる。皮膚にできる発疹が、狼に噛まれた跡のようなことから名付けられた。男女比は1:9で、こちらも圧倒的に女性患者が多い。

 このほか、赤血球が攻撃されて起こる自己免疫性溶血性貧血、肺や腎臓が損傷を受ける「グッドバスチャー症候群」、特に目の筋肉が弱る「重症筋無力症」、血管が攻撃される「血管炎」、胃の粘膜が損傷し、ビタミンB12を吸収できないことで貧血や感覚消失などが起こる「悪性貧血」、インスリンを産生できなくなる「1型糖尿病」など――。

 いまだに、その発症メカニズムが解明されていない難治性の疾患は多い。研究は進んでいるが、ステロイドや免疫抑制剤が中心の対処療法しかなく、根本的な治療法はないのが現状だ。患者やその家族は、一日も早く有効な新薬の開発されることを望んでいる。
(文=編集部)

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