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【連載第3回 沸騰するアジア医療圏】

世界レベルの医療機関に発展した韓国のサムスン医療院の野望

医師と看護師など約6500名が勤務するサムスンソウル病院

 韓国の医療の特徴とは何であろうか? その特徴は「産業的」医療であるという点に尽きる。

 韓国政府は1980年代前半まで、経済成長を優先させ、その余った税金を社会保障にあてるという、いわば救済策のような政策しか講じてこなかった。1961年に公務員年金と生活保護、1963年に軍人年金といった制度が設けられているが、それは限定的なものであり、政権の正当性のために実施される、という範囲にとどまっていたのである。

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 韓国の公的医療保険制度が本格的に実施されたのは1977年、従業員500人以上の事業所の勤労者とその扶養家族を対象とした「職場医療保険」からである。1987年に軍事政権が終わり、その後、民主化プロセスが進むと、1988年に自営業者、1989年に非都市住民が制度の対象となって、国民皆保険が達成された。

 しかし、国民皆保険制度といっても金銭的な制約があり、対象となる医療に対するカバー率は低い。日本の公的皆保険のカバー率に比べれば3分の2から半分くらいではないかとも言われている。そのため、日本では禁止されている、保険診療と自由診療を混合する混合診療も認められている。

産業的医療の代表例ともいえる財閥系の病院

 韓国にはいくつか財閥があるが、その最大規模を誇るサムスン電子は、2010年の売上高が韓国GDPの22%、株式時価総額は韓国株式市場の25%、韓国輸出額の24%を占め、資産は韓国国富の3分の1に迫る。フォーチュン・グローバル500による格付けでは、世界企業ランキング20位(2012年)という巨大企業だ。韓国製品といえば、かつては粗悪なイメージがあったが、それを払しょくして躍進を続けている。

 この会社が、次なるターゲットに選んだのが医療だ。CT、MRIなど目立った医療機器はまだ手がけていないが、バイオ医薬も含め医療分野に注力していくと宣言している。その実験場ともいえるのが「サムスン医療院(三星医療院)」である。

 サムスン医療院は、生命尊重の精神を基に、最高の診療・教育・研究を実践し、人類の健康、人材育成、医学の発展に貢献するという目的を持って設立された、いくつかの医療施設や研究施設を擁する総合医療機関である。

 1982年5月、サムスン生命公益財団が創業され、1994年11月、1100病床を持つ「サムスンソウル病院」が開院。現在では、地上20階、地下5階のビルを持ち、1951ベッドと40の診療科、8つの専門医療センターと110余りの特殊クリニックから構成され、1200余名の医師と2000名の看護師を含む約6500名が勤務する第三次医療機関である(データは同病院のHPを参照)。

 また、2008年には、地上11階、地下8階、652ベッド、20の手術室を擁するサムスンがんセンターのオープン。単一建物としてはアジア最大のがん専門治療センターで、がん患者のための包括的な治療を実現しようとしている。

 診療の質はもちろん、規模の面でも世界的なレベルの医療機関に発展したサムスン医療院。次回にはこの病院の海外戦略について述べよう。

連載「沸騰するアジア医療圏」バックナンバー

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