放射線治療にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線、エックス線、中性子線、重粒子線が用いられる。このうちアルファ線、ベータ線、中性子線、重粒子線は高速粒子線に、ガンマ線、エックス線は電磁波(高エネルギー)に大きく分類される。
「ホウ素中性子補足療法」は、中性子と増感効果のあるホウ素との反応を利用し、正常な細胞にはあまり損傷を与えず、腫瘍細胞だけを選択的に破壊する。ホウ素の原子核が中性子を捕捉する際に放出されるアルファ線によって治療される。
[an error occurred while processing this directive]しかし、医療に必要な中性子を得るには原子炉が必要で、まだ実験段階だ。日本では、京都大学附属原子炉と日本原子力開発機構でしか治療できない。
ガンマ線とエックス線の特徴
ガンマ線は、コバルト60やセシウム137などの放射性物質が自然崩壊することで発生する。コバルト60のガンマ線は、人体の深部まで透過できるので、これまでがんの治療に広く使用されてきた。このコバルト60から発生するガンマ線を用いる頭部専用定位放射線手術が、「ガンマナイフ治療」である。
エックス線は、ガンマ線と同じ特徴をもっているが、発生の仕方が異なる。高速の電子が金属にぶつかって停止すると、電磁波の形でエネルギーが発生する。この現象は、レントゲン博士によって1895年に初めて発見された。
レントゲン博士は、この放射線をエックス線と命名。エックス線を用いる放射線治療は、リニアックやガンマナイフと同様に「エックスナイフ」と呼ばれる。定位的に全身の治療が可能で、サイバーナイフ、ノバリス・シナジー、トモセラピーなどがある。
話題の重粒子線治療は高額医療の代表
いま話題の重粒子線治療は、装置や稼動施設に120億円ほどかかり、高額で装置が大掛かりだ。日本では4カ所にしか施設がない。医療保険の適応がないので、治療費は300万以上かかる。
重粒子線の特徴は、ピンポイントでありながら高線量で腫瘍部位を狙うことができ、周辺の正常な組織に対する影響が少ないことだ。治療は、独立行政法人放射線医学総合研究所、重粒子線医科学センター病院、群馬大学重粒子線医学研究センター、九州国際重粒子線がん治療センターで受けることができる。
"迎撃ミサイルが動く標的を打ち落とす"
定位放射線照射は、定位放射線手術と定位放射線治療に大別される。ガンマナイフ治療は定位放射線手術に属し、頭部専用の器具でメスを用いずに放射線で手術することが可能だ。
ガンマナイフは定位脳手術が原点
一方、定位放射線治療は全身の治療が可能で、サイバーナイフ、ノバリス・シナジー、トモセラピーなどがある。重要な臓器を避けて、動く病巣を多方向、多箇所から照射することができる。まさに、"迎撃ミサイルが動く標的を打ち落とす"技術の応用だ。
「強度変調放射線治療」は、腫瘍内に当てる放射線の強度を変えることができる。そのため、周辺の重要な臓器の被曝を減らし、腫瘍部を強力に治療する。また、画像情報をもとにして、患者さんの位置誤差を補正しながら、正確に治療を行う技術が「画像誘導放射線治療」である。