コロナワクチンの電子証明の発行は本当に意味があり有効なのか?
デジタル庁がコロナワクチンの電子証明の発行を開始した。
アプリ名は「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」で、「新型コロナウイルス感染症予防接種証明書」と明記されており、氏名、接種回数、最終接種日、発行日が併記されていて、最後に〇〇区長と記されている。性別、年齢、住所などの名前以外の個人情報は一切記載されていないシンプルなものだ。
これは単にコロナワクチンを接種したことの証明書ではあるが、「感染症予防接種」と補足説明しているところがかえって紛らわしく、いわゆる「ワクチンパスポート(もしくはワクチン検査パッケージ)」にあたるのかどうかはわからないし何の説明もされていない。
[an error occurred while processing this directive]筆者のようにワクチンの2回目の接種が5月下旬で11月上旬の時点で既にワクチン抗体価が陰性となっているものであってもこの証明書が発行されるわけだが、コロナワクチンの効果は数か月で減衰していくことが明らかになっている現在、もはやワクチンパスポートの役割は果たすとは思えない。そのような電子証明書の発行が今始まったことにどういう意味合いがあるのだろうか。
基準や意義の見直しを余儀なくされる海外でのパスポート
諸外国ではもっと早い時期のワクチン接種が始まった頃から免疫パスポートが取り入れられ、ワクチン接種を受けてもらうための動機付け(インセンティブ)や経済活動を再開するための潤滑剤の役割を果たすことが期待された。免疫パスポートの内容としてはワクチン接種証明、PCR検査の陰性証明に加えて国によってはコロナ罹患歴も含められていた。しかし、ワクチン接種後の効果が数か月で減衰することがわかってきてからは、接種日に合わせて期間限定とするなどの措置が追加された。また、コロナに感染したあとに獲得する免疫も長くは続かないことがわかってきて、総合的な基準の見直しを余儀なくされている。
したがって今の段階で単純な接種証明書の発行を開始することの意義は相当薄れてきていて、感染症を予防する科学的な根拠に裏打ちされたものとはいい難い。それでも経済活動の活性化の引き金になるのならその意味合いを理解した上で有効活用することは悪いことではない。ただし、デジタル庁の証明書を取得するにはマイナンバーカード(現在の取得率は40%)と携帯アプリを持っていることが前提条件になるので、日本での利便性は限定的であろう。
免疫パスポート以外でこの証明書を有効活用する手段としては、ワクチン接種券の代わりに利用するというものがある。市町村のワクチン接種台帳の記載を元に発行されているので、接種券発行を省略してこの証明書を提示してワクチンを追加接種できるようにしたらよい。この証明書の発行に当たっては、市区町村の接種記録漏れや誤入力などいろいろな問題が取り上げられているが、その詳細に関してはここでは触れないことにする。
ワクチン効果が減衰しているならば、科学的な検証に基づいた対応が必要
ワクチンパスポートという考え方はワクチンの抗体価が高いまま感染予防効果が維持されていることが前提となっているが、その前提条件が崩れ始めている。常にいち早くコロナ感染の解析に手を付ける諸外国のデータからは、コロナワクチンの効果を示す抗体価は接種後3か月以降に急激に減衰していって、接種後6カ月ではほとんど効果がなくなることがわかってきた。
日本でも医療従事者を皮切りに今年の3月からコロナワクチンの接種を始めていたのだからワクチン接種後の抗体価を経時的に測定するなどの臨床研究が行われてしかるべきだが、日本のコロナ行政のリーダーたちにその気はない。国が動かないものだから見るに見かねて群馬県(相馬市ほか)が福島県立医大の協力で実施した検証では、諸外国のデータ同様に接種後3か月と早期から抗体価の減衰が始まっていることが明らかになった。
(https://toyokeizai.net/articles/-/478139)