注目されつつある新型コロナに対する幹細胞治療
死亡者数が報告されている国だけでも50万人に迫る勢いの新型コロナウイルス(COVID-19)による感染症。各国で治療薬やワクチンの開発が試みられているが、6月の中旬段階で有効性、安全性が確立されているものはいまだにない。
そんな中、にわかに注目を集めているのが幹細胞による治療だ。
[an error occurred while processing this directive]中国、アメリカ、日本でも臨床試験が始まった!
マイアミミラー大学医学部の糖尿病研究所と細胞移植センターのディレクターであるカミロ・リコルディ医学博士が率いるチームが、COVID-19の重症例24名の患者を対象として肺の炎症を抑制するため臍帯由来の間葉系幹細胞による治療の臨床試験を申請、4月中旬、FDAの承認を受けた。すでにマイアミ大学では1型糖尿病とアルツハイマー病に対する同様の幹細胞による臨床試験が承認されている。(https://www.miamiherald.com/news/coronavirus/article242388196.html)
COVID-19に対する幹細胞治療はすでに中国ではこれより早い時期にいくつかの研究が試みられている。その一つ、北京YouAn病院で行われた研究では、COVID-19による肺炎をきたしている7名の患者(1例は重症、4例は重症、2例は非重度)に幹細胞治療がどれほど有効かを評価した。点滴治療前は、すべての患者で高熱、息切れ、低酸素飽和状態があったが、治療後2日以内に肺機能と症状を大幅に改善、このうち、軽度の症状を示す2人の患者と1人の重度の患者が回復し、治療から10日以内に退院したとしている
(http://www.aginganddisease.org/EN/10.14336/AD.2020.0228)
UAE(アラブ首長国連邦)は5月1日、COVID-19に対してCOVID-19に感染した患者の血液から採取した幹細胞を活性化させ、霧状にしたうえで肺に吸入させるもので、治療を受けた患者73人全員が回復し、副作用もなかったとしている。(https://www.mohap.gov.ae/en/MediaCenter/News/Pages/2393.aspx)
COVID-19に対する幹細胞治療の研究や症例報告が急増する中、国内でも動きがある。
4月28日、都内で医師、製薬会社らによる「国際新型コロナ細胞治療研究会」が、幹細胞を使った新薬を開発するとして、記者会見を行った。同会の共同発起人には鳩山友紀夫元首相、米前大統領のバラク・オバマ前大統領も名前を連ねているため注目を集めたのだ。
さらに、6月10日、COVID-19の患者に対する間葉系幹細胞治療の臨床試験をロート製薬が進める計画であることが明らかになった。
にわかにあわただしくなってきたCOVID-19に対する幹細胞治療の可能性について、再生医療専門医療機関として、幹細胞を活用した膝関節治療、肝障害、更年期障害治療などを積極的に展開する(医)スターセルアライアンス スタークリニックの管理医師竹島昌栄先生は大きな関心を寄せている。
「けがでも感染症でも必ず自己治癒の過程があります。その過程では幹細胞が重要な役割を果たしています。現在、幹細胞治療として注目を集めているのは脂肪組織、骨髄、臍帯組織や臍帯血などから比較的容易に得ることができ、骨や軟骨、血管、心筋細胞に分化できる能力をもつ体性幹細胞の一つであるMSC(間葉系幹細胞)です。こうした幹細胞は10代をピークに加齢とともに減少していきます。ですから今回のCOVID-19で高齢者のほうが重症化しやすいのは、組織再生能力のある幹細胞が少ないためでもあります。そこで幹細胞を補充してあげるというのはきわめて理にかなっていると思います」。