サマータイム導入で甚大な健康リスク!(depositphotos.com)
殺人的な猛暑だ。この過酷な炎暑のさなか、断行される2020年東京オリンピック・パラリンピック。
その酷暑対策として、時計の針を2時間進めるサマータイムの導入を政府・与党が急いでいる。なぜだろう?
[an error occurred while processing this directive]日本でもサマータイムは実施された
サマータイムは、日本では1948年から1951年に実施されたが、残業量増加など労働条件の悪化のため、1952年以降は廃止。2005年と2008年に議員立法で導入が検討されたものの、健康リスクや長時間労働の助長が懸念されて流れる。
その後、五輪組織委員会の森喜朗会長が内閣に取りすがり、安倍首相の肝入りで再浮上。電波時計、テレビ、カーナビ、ETCが不具合を起こすとの批判、コンピュータシステムの改修に追い込まれるIT業界の拒否反応など、社会や世論の風当たりは強い。
かたやNHKの世論調査によると、サマータイムの導入に賛成51%、反対12%だが、国民の実感はどうか? まず国や財界の言い分だ。
約9700億円の経済波及効果?年間約119万トンの削減効果?
2007年12月、環境省、経済産業省、日本経済団体連合会(経団連)は、「サマータイム導入について」と題する資料を公開。その導入メリットを、直接効果(省エネ/温室効果ガス削減効果)、間接効果(犯罪・交通事故の減少)、経済波及効果(「自然」「健康」「文化活動」をキーワードとする活動の活発化)の3点を挙げる。
公益財団法人日本生産性本部が2004年と2007年に行った試算に基づき、約9700億円の経済波及効果(生産誘発効果)と年間約119万トン(CO2換算)の削減効果が期待できると踏んた。
また、2011年3月に経団連は「震災復興に向けた緊急提言(電力・エネルギー対策)」で「サマータイム制度より大胆なタイムシフトの導入検討」を発表した。
欧州議会でも見直しの動きが加速している中、8月10日、世耕弘成経産相は、サマータイム導入の可否について「経産省は1999年に一定の省エネ効果があると試算した」などと語り、執拗にサマータイムのゴリ押しを決めている(日刊ゲンダイ:2018年8月12日)。
照明器具や冷暖房の普及など、この20年間で技術革新が一気に進み、省エネや省資源のメリットは大きく後退しているのは明白。根拠としている日本生産性本部などの試算も、利益相反のおそれがあるため不透明で、説得力が弱い。
2007年に大阪大学が大阪市をモデルに実施した「サマータイム導入時の予想電力消費量」の試算によると、家庭の照明用電気消費量は0.02%減少するものの、冷房用電気消費量は0.15%増加し、全体として0.13%増加すると発表している。
どれだけ贔屓目に見ても、政財界の論法は時代錯誤の誹りは免れない。国民の生活感覚と大きく乖離し、国民軽視、人権侵害にもなりかねない。