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牛乳は本当に子供の成長に良い? 成分無調整の日本の牛乳ではカルシウム不足に!?

牛乳は本当に「子供の成長」に良いのか?(depositphotos.com)

 息子も1歳になり、そろそろ授乳も減ってきています。今の保育園では、食後やおやつの時間に冷凍母乳やミルクを飲んでいますが、来年度からはお昼の時間に牛乳を飲むかどうか選べるようです。

 私は子供の頃から、食事と一緒に牛乳を飲むのがあまり好きではないので、特に牛乳はいらないと思っていました。しかし、保育園や学校ではほぼ100%、牛乳が出されるようです。

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 その理由は、学校給食法に「完全給食とは、給食内容がパン又は米飯(これらに準ずる小麦粉食品、米加工食品その他の食品を含む)、ミルク及びおかずである給食をいう」という記載があるから、という意見もあります。慣習的なものも大きいのでしょう。では、牛乳を飲んだ方がいい、という科学的な根拠はどこにあるのでしょうか?

牛乳を飲むと骨密度が高まる

 アメリカ小児学会は1~2歳の幼児は1日で約480ml以上の牛乳を飲むことを推奨しています。これってかなりの量ですよね。アメリカの基準では、この時期の1日のカルシウム必要量は700mgであり、カルシウムにして300mg以上が推奨されているようです。

 日本人の場合、『日本人の食事摂取基準(2015年版)』によると、1~2歳の幼児は400~450mgのカルシウム摂取が推奨されています。牛乳100gに含まれるカルシウムは110mgなので、1日にコップ2杯くらいを飲むと、推奨量を摂取できることになります。

 牛乳が子供の成長に良いという研究もたくさんありました。

 例えば、アメリカのボストン大学の研究者たちが行った研究では、3~5歳の子供106人を、1987年から1999年にわたって追跡しています(注1)。3~5歳で乳製品をよく摂取していた群では、15~17歳になった時の骨密度が高いという結果が出ています。特に、子供時代の運動習慣と、牛乳をはじめとする乳製品を摂取する習慣があることが、骨密度のピークを高めるために大切です(注2)。

 また、カナダで2008~2013年にかけて行われた研究では、1~6歳の子供2831人を調べたところ、牛乳を飲んでいない子はビタミンDの濃度が低いことがわかりました(注3)。

 ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨密度を維持する働きのある栄養素ですが、実はカナダやアメリカでは、牛乳のほとんどでビタミンDが強化されているという事情があります。そういった国では、牛乳はビタミンDの摂取源でもあるのです。カルシウムとビタミンDを同時に十分摂取すれば、成長にはさらに良い影響があるでしょう。

成分無調整の「日本の牛乳」のデメリット

 一方で、日本の成分無調整の牛乳では、この話は当てはまりません。牛乳100gに含まれるビタミンDは12IU(編集部注:IU=International Unit/国際単位)です。これでは1日に500ml飲んだとしても60IU程度にしかなりません。1歳以上の幼児の1日の必要量は600IUなので、その10分の1です。

 また、牛乳は鉄分がとても少ないというデメリットがあります。1~2歳の1日の摂取推奨量4.5mgに対して、牛乳100g中に鉄は0.02mgしか含まれていません。牛乳を飲みすぎてお腹がいっぱいになってしまうと、ただでさえ不足しがちな鉄分を食事から十分に摂取することができなくなる可能性もあります。

 このような背景も考えると、十分なカルシウムを摂ることは大切ですが、そのために必ず牛乳を飲まなければならないというのは、言い過ぎかもしれません。

「植物性ミルク」がヘルシーとは限らない

 では、豆乳やアーモンドミルクなど植物性のミルクはどうでしょうか?

 牛乳より「ヘルシー」であるというイメージがあるかもしれませんが、イメージだけでこれらのミルクを使うのは、ちょっと待ってください。実際には必ずしもヘルシーとは限りません。

 例えば、100g中に含まれるカルシウムは、製品にもよりますが、およそ牛乳が110mg、無調整豆乳が15mg、アーモンドミルクは75mgです。タンパク質に関しては、牛乳は3.3g、無調整豆乳も3.6gですが、アーモンドミルクではわずか0.6gです。豆乳やアーモンドミルクでは、十分なカルシウムやたんぱく質を摂取することはできず、牛乳の代わりにはなりません。

 また、豆乳にはイソフラボンを摂りすぎるというデメリットもあります。イソフラボンは、女性ホルモンに似た形をした物質です。動物実験の結果からは、動物の子供の生殖機能に影響がある可能性もあると言われており、人間の体への影響は、まだはっきりとした結論が出ていません。

 現在の日本の基準では、大人での安全な摂取目安量は1日に70mgであり、子供が大豆イソフラボンをサプリメント等で摂取することは勧められないとされています。

 豆乳のイソフラボン含有量は、製品によっても異なりますが、平均で100g中25mg程度です。納豆1パックには約37mg、豆腐半丁(150g)で約30mgのイソフラボンが含まれています。

 今のところ、小児の安全な摂取量の目安は示されていませんが、豆腐や納豆、きなこなど、大豆製品は乳幼児でも食べやすく、離乳食・幼児食でも活躍する食材です。食事から摂る分だけでも、十分なイソフラボンの量になることはお分かりいただけると思います。

 ちなみにアメリカの基準では、大豆由来の粉ミルク中のイソフラボンは、乳幼児で体重1kgあたり1日0.08mg以下にすることが定められています。離乳食が始まるまでは、10kgの乳児でも1日0.8mgまでということになります。

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