満月の晩はバイクの運転は要注意!(depositphotos.com)
1月31日、約150年ぶりに「スーパー・ブルー・ブラッドムーン」が観測された――。
皆既月食で月が赤銅色を帯びる「ブラッドムーン」、満月がひと月で2度起こる「ブルームーン」、さらに満月がひときわ大きく見える「スーパームーン」の3つが重なるという、とても珍しい現象だ。
[an error occurred while processing this directive]前回観測されたのは1866年3月。当時の日本は、政治を司る江戸幕府が大きく変わり、1867年2月13日に明治天皇が即位。明治維新が幕を明けた。
奇しくも今年は新しい元号が発表され、来年は平成が終わりを告げ、今上天皇から皇太子に皇位継承がなされる。天皇の生前退位は、江戸時代以来200年ぶりだ。
そんなこともあり、今回のスーパー・ブルー・ブラッドムーンを巷では「新たな事象のはじまり」とささやかれているようだ。
満月の夜には「何か起きるかも……」という不思議な予感
地球から最も近い天体である月に対して、古来、人々は「親しみ」と「畏敬」の念を抱いてきた。現代に生きる私たちも、大きな満月を眺めながら「こんな夜は何か起きるかも……」という不思議な予感に囚われることがある。
月の満ち欠けと人間界で起こる出来事、たとえば事故や犯罪などとの関係については、古くから多くの言い伝えや都市伝説的なものがある。科学がそれを放置してきたはずもなく、現在に至るまでさまざまな研究が行われている。
しかし今のところ、私たちは決定的な「決め手」を掴むことができていない。
インドの満月の夜は犯罪率が2倍以上?
たとえば、満月や新月などの「月齢」と「犯罪発生率」との関係を調べた研究がある。特に強い相関を示したとして有名なのが、1984年12月、『BRITISH MEDCAL JOURNAL』に掲載された「Full moon and crime」という論文だ。
研究では1978〜1982年の5年間にわたり、約300km離れた3つの町の警察署に報告された犯罪の発生率を調べ、月齢との関係を調べた。その結果、満月の日の犯罪発生率はそれ以外の日の2倍以上となり、驚くほど高くなった。
このデータ自体は正しい手順で導き出された正当なもので、一見すると「確かに満月が人の犯罪心理に大きな影響を与えている」ように見えるが……。
論文を発表したインドのPatna Medical Collegeの研究者は「月の重力に起因する体内の潮位変化が、身体の物理的、生理学的、生化学的変化を引き起こし、そのために犯罪を犯す衝動は増加するのかもしれない」という仮説を立てている。
この研究仮説は、1980年代にアメリカの精神科医A・L・リーバーが提唱した「バイオタイト理論」とよく似ている。「月の引力が、犯罪や交通事故、出産、心臓病などに影響する」という統計をもとにしたもの。
日本でも『月の魔力』(東京書籍)という著書が出版され、一世を風靡するほどの話題を呼んだ。
否定された「体内の潮の満ち引き」論
しかし、その後、これらの研究は否定されることになる――。
バイオタイト理論は「肝心の統計の取り方に偏りがある」など多くの問題点が指摘され、科学的見地から「ほぼ根拠がない」と一蹴されてしまった。
同様に先のインドで犯罪に関するの研究についても、「データを取ったのがインド国内だけ」という理由で疑問視されている。インドのように太陰暦を採用している国では、祭事が満月や新月の日と重なるため、人々の活動が活発になり、必然的にトラブルも増える可能性がある。
月齢というより、こうした社会的背景が強く影響を及ぼした結果だと考えられているからだ。
それ以後も、犯罪率や交通事故の発生率と月の関係について多くの研究が行われてきたが、否定的な結論に落ち着くものが多かった。