禁煙ポスターを見ることで、逆にタバコを喫いたくなる?(depositphotos.com)
禁煙が世界的な潮流であることは誰の目にも明らかであるが、タバコへの欲求はそう簡単にはなくならない。これから成人になる若者にどうやって喫煙を思いとどまらせるか? どこの国でもさまざまな手段を試みている。
タバコの害を分かりやすいイメージで喚起させるポスターは、その手段の最たるもの。だが、こうしたポスターは、じつは逆効果で、かえってタバコへの欲求を喚起するとしたら――。そんな気になる調査結果が『Nicotine&Tabacco Research』(12月13日オンライン版)に掲載された。
[an error occurred while processing this directive]ポスターが喫煙への気持ちをさらに高める
この研究は、米ランド研究所上級行動科学者のWilliam Shadel 氏らが11〜17歳の男女441人を対象に実施したものだ。
同氏らは、実験室に擬似的なコンビニエンスストアを作り、そのレジカウンターの背後には喫煙の害を伝えるポスターを掲示した。
ポスターには「警告:タバコはがんの原因」というメッセージとともに、「喫煙によって不健康な外見になった口の写真」が掲載されたものを使用。その上で、来店した若者の喫煙に対する意識への影響について検討した。
その結果、疑似コンビニエンスストアで買物をした若者のうち、「以前から喫煙に否定的であった者」については、ポスターを見る前と見た後で喫煙に対する意識の変化はなかった。
しかし、「以前から喫煙に興味があり、喫煙を開始するリスクが高いと判定された若者」は、「ポスターを見ることで喫煙を始めたいという気持ちがさらに高まる」ことが明らかになったのだ。
この結果を踏まえ、Shade氏は、「もともと喫煙リスクの高い若者は、タバコの害を警告するポスターに対して身構えるために、ポスターが伝える健康リスクを信用しなかったり、軽視したりする可能性がある」と考察している。
その上で同氏は、「禁煙教育の一貫でタバコ製品の販売店に警告ポスターを掲示する場合には、慎重に検討すべきであることが今回の研究で示された」と結論づけている。