「3Dビデオ・ゲーム」が脳を老化から防ぐ!?(depositphotos.com)
年齢にかかわりなく、人は認知機能を鍛えることができる――。そんな触れ込みで数年前に「脳トレーニング」がブームになり、関連書籍やパズル、ゲームソフトなどの商品が次々と登場した。
ところが、当時から多くの脳学者が、こうした「脳トレ」効果は誇大広告だと指摘しており、2016年あたりからそれを裏付ける論文も登場し始めた。
[an error occurred while processing this directive]脳トレの効果? 認知能力は改善しない
たとえば米イリノイ大学が中心となって、過去に出た300件以上の脳トレに関する論文をレビューした研究では、「これらの脳トレゲームが脳の認知機能を向上させているとするには根拠が薄弱すぎる」と結論づけている。
脳トレによって特定の課題を解く力はついても、それは認知能力に汎用化されるものではないのだという。
また、米ジョージメイソン大学が行った実験では、「脳の機能を向上する」と告げて脳トレを行った被験者のIQ検査が5〜10ポイント上がったのに対し、何も伝えずに同じ脳トレを行った被験者の成績は変わらなかった。
そのことから「脳トレにまったく価値がないとはいえないが、一時的なプラセボ効果が結果を向上させていると考えるべき」と結論づけた。平たくいうと「思い込みなのでは?」ということだ。
40歳の運動は20年後の脳に表れる
物忘れやうっかりミスに悩まされ、何とか脳の衰えを食い止めたいと考えている中高年にとって、「脳トレに効果がない」という結果はいささか残念だ。
しかし、脳科学はこの数年間もめざましく進歩している。近年の研究で、40代からでも脳を鍛えられる可能性が報告された意外な方法や、注目されている方法をご紹介しよう。
①週に数回の有酸素運動を行う
いまや脳科学の分野では、「運動が脳の神経細胞を育てる」ことは常識となりつつある。
9年前に発行されて話題を呼んだ『脳を鍛えるには運動しかない!』(NHK出版)の著者で、ハーバード大学医学部のジョン・J・レイティ博士は、次のように述べている。
「運動すると、脳由来神経栄養因子(BDNF)という物質が脳の中でさかんに分泌されます。このBDNFが、脳の神経細胞・ニューロンや、脳に栄養を送る血管の形成を促すことが明らかになりました」
さらに運動には、認知能力を高めるために必要な神経結合を増やしたり、ドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンといった思考や感情にかかわる神経伝達物資の分泌を促したりする効果もあるという。
一方、米ボストン大学が平均年齢40歳の約1500人を追跡した研究では、40歳の時点でランニングマシンの成績が悪く運動能力が低下していた人は、20年後に脳が早く萎縮していることが判明した。
逆に言えば、中年期の運動によって脳の萎縮や認知機能の低下を食い止められる可能性が大きい。
脳を育てるために効果的なのは、ウオーキングやエアロバイクなどで、一定時間にわたって心拍数を上げる有酸素運動だ。いくつかの研究では有酸素運動によるトレーニングを行うことで、記憶に関係する海馬が大きくなることもわかっている。
週に2〜3日は全身を十分に動かし、脳にたっぷりの血液を送ることが活性化に繋がるという。