「新型タバコ」の安全神話が崩壊(depositphotos.com)
こちら(非喫煙者)から訊いてもいないのに、紙タバコから新型タバコ(電子タバコ、非燃焼・加熱式タバコ)へと転向した人々が、決まって口にする定番の弁明が幾つかある――。
彼ら曰く「これまでのタバコよりも健康リスクが少ない」「受動喫煙の危険性もない」、あるいは、煙がない/見えにくいのをいいことに「禁煙エリアでも吸える」と蒸気を吐いている。
[an error occurred while processing this directive]しかし、それは「都市伝説」みたいなもので、どれも科学的根拠はない。しかもここへきて、各国の専門筋が有害警告を鳴らし始め、愛好派は追い詰められている。
なかでも、加熱式タバコの世界的な代表格、フィリップモリス社の「IQOS(アイコス)」が、米国立衛生研究所(NIH)と米食品医薬品局(FDA)の資金提供下で行なわれたラット実験の報告によって、名指しで健康被害の可能性を指摘された一件は象徴的だ。
IQOS(アイコス)の安全神話はアウトか?
IQOS(アイコス)は血管に悪影響を与える――。11月11~15日にアナハイムで開催された米国心臓協会(AHA)の年次集会の場で、前掲の実験を担ったカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究班はそう言い切った。
Matthew Springer氏(UCSF医学部循環器内科学教授)らによるラット実験の具体的内容は、次のようなに単純明快なものだった。
「①IQOSを加熱した蒸気」「②紙巻きタバコ(マルボロ)の煙」「③清浄な空気」のいずれかをラットに曝露させた上で「血流依存性血管拡張反応(FMD: flow-mediated dilation)検査」によって血管内皮機能を評価した。
まずは、<1回を15秒間>として<5分間に10回>の曝露を実施した。次いで<1回5秒間>の曝露を同じ<5分間で10回>試みた。
すると前者の実験結果で、①のIQOS組が58%、②のマルボロ組で57%、ラットの血管内皮機能が低下した。後者の結果でも、①のIQOS組が60%、②のマルボロ組で62%の低下が読み取れた。
つまりIQOSもマルボロも「同程度の低下」が認められたというのだから、IQOSの発売元フィリップモリス社は穏やかではない。というのも、今や複数国で販売されて大ヒット商品のIQOSだが、肝心のお膝元である米国内では許可されておらず、目下、前出のFDAに承認を申請している最中なのだ。
これまで同社は、「摂氏600度でタバコ葉を燃やす」従来の紙巻きタバコは有害物質を含んだ煙を発生させるが、「摂氏350度で加熱する」IQOSは、ニコチンを含む蒸気こそ生じるものの煙は出ない――。依って「紙巻きタバコより安全」と主張してきた。