電子たばこは2020年には国内市場の「3割」を占めると推計(depositphotos.com)
本気で「禁煙国家」をめざしているオーストラリアでは、2012年から厳しいPR規制を実施しており、タバコ各社の商標やロゴマークの使用も認められていない。代わりに統一デザインの箱面には、喫煙が原因で病気になった患者らの痛ましい肖像が刷り込まれている。
そんな思わず喫煙意欲をそがれる外観に加え、同国内では現時点で25本入り1箱の平均価格が25豪ドル(日本円で約2200円)と「世界最高水準」——―。
[an error occurred while processing this directive]このまま段階的な税率引き上げが実施されれば、3年後には40豪ドル(約3500円)に達し、庶民はとても吸えない「高級嗜好品」と化してしまう。
3年後といえば「おもてなし」を謳う東京五輪・パラリンピック開催の年であるが、その基本の<基>である「受動喫煙対策法案」の今国会提出も先送りされてしまった「燻り国家」とは、あまりにも対照的な判断力と施行力。
ここはひとつ、五輪のロゴも含めて開催国も豪州へお譲りしてはどうかと「燻り総理」に嫌味も言いたくなるような国柄の違いである。
嫌煙派の「のぞみ」が成就!? 新幹線から喫煙車両が撤退
一方、総理が「こんな人たちには負けてられない!」とキレてしまった同じ空の下でも、民間の「禁煙対策」は着々と拡充中。「吸わない/乗らない」向きには初耳かもしれないが、東海道新幹線では今年3月のダイヤ改正に伴い、のぞみ・ひかり(臨時列車を除く)から喫煙車両が撤退した。
ちなみに、平成10年12月1日より導入された「たばこ特別税」は、日本国有鉄道清算事業団(つまりJRの前身である国鉄)及び国有林野事業特別会計の「負債」を補うために創設された。
税率は1000本につき820円。平成28年度予算額で1428億円。つまり、喫煙者が「国鉄の赤字」を支払っているということも念のため付記しておこう。
こうした時代の趨勢に最も敏感に対応しているのがメーカー各社なのは言うまでもなく、肩身のせまい「紙巻きタバコ」からの越境(転向)派が縋るように飛びついている次世代商品、通称「タバコベイパー(蒸気)」(=加熱式タバコ/電子タバコ)へのシフト化が加速している。
というのも新型タバコは、件の2020年には国内市場の「3割」を占めると推計されているのだから無理もない。
喫煙層の越境傾向を象徴していたのが2016年の国内タバコ市場の大きな落ち込みで、単年ベースの販売数量(対前年比8%減)/販売金額(同7%減)共に深刻化。一部銘柄の値上げも要因の一つとはいうが、登場以来追い風に乗る新型タバコ勢の異常な人気ぶりが市場縮小に拍車をかけているようだ。
過熱人気の先導商品は「アイコス芸人」なる俗称まで生んだご存じ、フィリップ・モリス・ジャパン社の「IQOS」。タバコ葉を電気で加熱し、依存性のあるニコチンを蒸気で発生させる仕組み次世代タバコだが、ホルダーや充電器などの初期投資が約1万円(定価9980)。
それなりの高額セットが昨年4月の全国発売以降、年末までの販売数で300万個を突破したというから凄い。
国内の喫煙者は「約2000万人」と推計されているが、フィ社によれば「100万人以上(5%前後)の喫煙者」が紙タバコから完全に切り替えた(転向した!)とされている。