脊柱管狭窄症を運動で改善(depositphotos.com)
先天的または後天的に神経が通る「脊柱管(せきちゅうかん)」が狭くなり、脊髄や神経が圧迫されるために腰椎(ようつい=背骨の腰の部分)や頸椎(けいつい=背骨の首の部分) の脊柱管に病変が現れる難疾患、それが「脊柱管狭窄症」だ。
清水整形外科クリニック(埼玉県さいたま市)の清水伸一院長は、脊柱管狭窄症は腰椎や頸椎だけでなく、胸椎(背骨の胸の部分)、足の4つの部位の異変が密接に関連する全身病であることから、脊柱管狭窄症に特有の辛い症状を緩和する運動療法「8の字スクリュー」を開発・提案している。
[an error occurred while processing this directive]脊柱管狭窄症の体操「8の字スクリュー」でインナーマッスルを鍛え体幹バランスを強化
「8の字スクリュー」は、どのような体操だろう?
多くの中高年を悩ます腰部脊柱管狭窄症は、最初は不良姿勢によって生じた腰椎(背骨の腰の部分)の小さな歪みに過ぎないが、小さなダメージが少しずつ蓄積すると、椎骨(腰椎を構成する骨)、椎間板(クッションになる軟骨)、靱帯(骨と骨をつなぐ線維組織)などが徐々に変性し、脊柱管が狭まるため、腰部脊柱管狭窄症につながる。
人間の背骨は「S字カーブ(ナチュラルライン)」を描いているので、体の重さや衝撃を背骨全体に分散させるが、長年の不良姿勢によって背骨のS字カーブが崩れると、腰椎の1ヵ所だけに負担が集中するため脊柱管に狭窄が生じる。したがって、腰部脊柱管狭窄症の悪化を防止・改善するカギは「狭窄が生じている部位の負担を減らすこと」に尽きる。そのためには、脊柱管の狭窄部位にかかる負担を腰椎全体に分散しなければならない。
腰椎の負担を分散させるためには、腹筋と背筋だけではなく、体幹に注目する必要がある。体幹とは「頭と手足を除いた人間の胴体」、つまり「体を揺支える筋骨格」をさす。
体幹のうち「背骨」が「家の柱」なら、柱を支える「土台」が骨盤の中心にある「仙骨」だ。仙骨の左右にある「仙腸関節」が、あたかも地震の揺れを低減する免震システムのように働き、体の重みや衝撃を軽減しているので、骨盤は体の重みや衝撃を柔軟に受け止められる。さらに、背骨や骨盤の周辺には、体幹を支える背中の「多裂筋」や腹部の「腹横筋」などの深層筋(インナーマッスル)が、背骨と骨盤をしっかりと支えている。
このように、背骨・骨盤・深層筋のバランスが保たれなければ、背骨のS字カーブを正常に保持できない。
ところが、積年の不良姿勢が重なり、背骨のS字カーブが崩れると、骨盤が後ろに傾くため、仙腸関節に歪みが生じ、可動域(動かせる範囲)が狭まるので、腰椎の1ヵ所に負担が集中し、狭窄が生じる。つまり、背骨のS字カーブを取り戻せれば、脊柱管狭窄症の悪化を防ぎ、症状の改善を促せる。そのためには、体幹の背骨と骨盤の周囲にある深層筋(インナーマッスル)を鍛えることが重要になる。
脊柱管狭窄症の悪化防止や改善のために、清水院長が患者に奨めているのが、深層筋(インナーマッスル)を鍛える体幹トレーニング「8の字スクリュー」だ。