温暖化が脂肪を燃えにくくする!?
「地球温暖化」とか「不都合な真実」などは誰もが一度は口にしたことがある言い回しだろう。
では、現在の国連の国際交渉は、平均気温の上昇を「〇度未満」に抑えることを目指しているか? 〇内を答えられる人は100人中いったい何人おられるだろうか。正解は「2度未満」である。
[an error occurred while processing this directive]これは産業革命前と比べた気温の上昇幅であり、それ以内に抑えられれば人類は辛うじて、地球温暖化がもたらす諸々の影響下でなんとか共存できるレベルだという。では、仮に1度上昇すると人類はどんな影響を受けるのだろうか。じつに興味ぶかい報告が公表されたので紹介しておこう。
この星の気温が1度上昇するごとに、米国内だけでも新たに「糖尿病」と診断される患者の数が年間当たり10万人強は増加する。つまり「地球温暖化」と「糖尿病」は浅からぬ関係にあり、前者が人々の健康被害に及ぼす影響力は侮れない――そんな驚くべき最新の知見が、『BMJ Open Diabetes Research & Care』(オンライン版・3月20日)に掲載された。
今回、「褐色脂肪細胞」に注目して研究を主導したのは、オランダのライデン大学医療センターのLisanne Blauw氏だ。件の細胞はその名のとおり褐色(茶色)で、熱を作り出しては体温を維持したり、食事から摂取した余分なエネルギーを燃やしていく働きをもつもの。
Blauw氏らは、この褐色脂肪細胞が寒波などの到来時に活性化されると見立てて研究を進めた。
その対極にあり、体内の余分なカロリーを中性脂肪として体内に蓄積する働きをもつのが「白色脂肪細胞」だ。双方の名称をダイエット用語として耳にしたという方もおられるだろう。蓄積とは正反対である褐色脂肪細胞の働きが活発な人は(エネルギー消費が多いぶん)太りにくいといわれている。
つまり、褐色脂肪細胞を活性化させるとインスリン感受性が改善すると考えられているわけで、Blauw氏もこう述べている。
「褐色脂肪細胞の場合、エネルギーを燃焼し熱を産生することによって、寒い環境下でも体温の低下を防ぐという重要な働きを示す。反面、温暖な気候下にあっては褐色脂肪細胞が活性化されにくくなり、これがインスリン抵抗性や糖尿病の発症につながる可能性が指摘されている」
そこで、同氏らの研究班は、室外の気温と糖尿病が大いに関連するのではないかと考えたのだ。
実際、最近の別研究においても、2型糖尿病患者にやや寒い環境下で10日間を過ごしてもらったところ、インスリン抵抗力が改善したという実験結果が報告されている。
この結果を重要視しているBlauw氏らは「褐色脂肪細胞の活性化が影響した可能性が高いだろう」と見立てている。さらに違う研究報告においても、褐色脂肪細胞は1年のうち冬期に最も活性化される傾向が示されているそうだ。