先日、英国の新聞『ガーディアン』に、一人の男が紹介された。米ロサンゼルスに住むチャック・マッカーシー氏の展開するビジネスが注目されたのだ。
マッカーシー氏のビジネスは、ただ、お客と一緒に歩きながら話しをすること。その距離に応じて、料金が加算される。メインユーザーは、働き盛りの20〜50代だ。
[an error occurred while processing this directive]レンタルフレンドやレンタル彼女といった「交際ビジネス」は、今や世界的に台頭しているが、マッカーシー氏の提供するサービスは、遊ぶでもなく、デートするでもなく、ただ歩きながら話すだけ。
いたってシンプルで、交際ビジネスの原点といえる。それでもニーズが高まり、一人で始めたビジネスも、今では5人のスタッフで運営している。
交際ビジネスというと、一般的には眉をひそめられがちだが、疾病予防の観点では、高齢者の訪問サービスと本質的には変わらないかもしれない。
英国で大手のNPO財団『メンタルヘルス・ファンデーション』の報告によると、18〜34歳の若者は、55歳以上の中高年より孤独に苦しむ傾向があるという。そして、若者の方が孤独から孤立感が強まり、病気になりやすくなるそうだ。孤独が影響をする病気の多くは、長年の積み重ねだ。
たとえば、60代で心疾患になりたくなければ、20代のうちから人との交流を持っておくと予防になるという。
米ブリガム・ヤング大学の研究グループが昨年発表した研究報告も有名だ。300万人分のデータを分析し、「孤独による死亡リスクは、1日15本のタバコを吸うことや、アルコール依存症と同等」「肥満よりも健康リスクが高い」という報告を挙げている。
同チームは、孤独の解消法として、「メールやSNS、オンラインは効果があるかもしれないが、機微のあるやりとりや感情面の深さは期待できない」としている。
近年は、「おひとりさま生活」や「ぼっち充」で自分らしく生きることが評価されがちだ。ラクで幸せかもしれないが、同大学の研究では、「一人でいても幸せを感じている」と答えた人でも死亡リスクが高いことを明らかにしている。主観に関わらず、孤独は健康を害するようだ。