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【シリーズ「DNA鑑定秘話」第37回】

DNA鑑定秘話〜ルーシーは木から落ちて死んだのか? 318万年前に生息した初期人類の死の真相

ルーシー は318万年前の化石人骨につけられた名前(写真はウィキペディアより)

 『NATIONAL GEOGRAPHIC』(2016年8月31日)よれば、318万年前にエチオピアに生きていた初期人類ルーシー(アウストラロピテクス・アファレンシス/アファール猿人)は高木から転落死したとする研究論文が科学誌 『Nature』に発表された。

 論文の筆頭著者のジョン・カッぺルマン教授(テキサス大学オースティン校人類学)らの研究チームは、1974年11月24日にエチオピアのハダール地域で発見された成人女性、ルーシーの人骨化石を新たに分析したところ、かなり高い位置から落ちた痕跡を示す骨の亀裂を発見した。

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 2008年にルーシーの骨が米国各地の博物館をめぐる展示ツアーがあった。その時、カッペルマン教授の研究チームは世界で初めてルーシーの骨を調査。すべての骨をCTスキャニングし、3万5000枚のデジタル画像を8年間にわたって詳細に分析して骨の亀裂を確認した。

 ルーシーの骨は風化や化石になる途上に受けた地質的な損傷があったものの、約40%が残っていた。発見された日に流れていたビートルズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」にちなみ、ルーシーの愛称がついた。エチオピア人はディンキネシュ(驚異的な貴女)と親しみを込めて呼んでいる。1980年、ルーシーをはじめとするアファール猿人の化石人骨が多数発見されたアワッシュ川下流域は、ユネスコの世界遺産リストに登録されている。

 ルーシーの骨を分析したカッペルマン教授によると、死後の時間が経過すれば、骨は乾燥した木の枝がぽきんと折れるように二つに折れる。 だが、ルーシーの骨を詳しく調べると、ぐにゃりと曲がる骨折(若木骨折または蝶番骨折)の状態だった。また、死後に乾燥した骨が割れれば、亀裂が入って砕けた骨の小片は、近くの地中で発見できるはずだ。だが、骨の小片は亀裂が入った骨の割れ目に挟まれた状態で残っていた。しかも、亀裂が自然治癒した形跡はなかった。以上の根拠から、骨の亀裂は死亡時に生じたと結論づけられた。

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