長生きしたけりゃ全粒穀物?(shutterstock.com)
近年のパンブームで多くの店で目に付くようになったのが、ずっしり重く滋味のある全粒粉のパンだ。
その人気ぶりは、これまで健康志向の強い客が買い求めているイメージだったが、最近ではその美味しさにハマった人が増えたのかもしれない。
[an error occurred while processing this directive]全粒粉や玄米などの穀物が体にいいことは、何となく知っていることだろう。これまでの研究でも、全粒穀物を積極的に食べている人は心臓病や糖尿病などの発症リスクが下がることが判明している。
今回、さらにもう一歩踏み込み、全粒穀物の摂取によって「長生きができるかもしれない」ことが、新たな研究で示唆された。
「全粒穀物の摂取量が多いほど、特に心血管疾患による死亡率が低くなる」と、研究著者で米・ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院(ボストン)助教授のQi Sun氏は述べている。
生活習慣病での早期死亡率が15~25%低下
未精製である全粒穀物には、米糠やふすまなどの表皮部分や、胚芽(栄養豊富な芯の部分)、胚乳(中間層)を含めた穀粒が丸ごと含まれている。全粒小麦粉で作られたパンやパスタ、オートミール、玄米、全粒コーンミールなどで摂れる。
今回の研究は、これまで世界各国で行われた発表済みの12の研究と、国民健康栄養調査(NHANES)のデータをレビューし、全粒穀物と長寿との関連性を調べたものだ。
米国、英国、北欧諸国の男女合計80万人の被験者を対象とし、研究期間は1971~2010年にわたる。この期間中、約9万8000件の死亡が記録されていた。
その結果、直接的な因果関係は示されていないものの、全粒穀物を1日に3皿分(合計48g)食べる人は、3皿分未満しか食べない人や全く食べない人に比べて、心疾患および脳卒中で早期死亡するリスクが約25%も低く、がんによる早期死亡リスクも、約15%低かったという。
それだけ、寿命も長くなっているわけだ。理由についてはさまざまな可能性が考えられる。
全粒穀物は食物繊維が豊富なため、血糖値やコレステロール値が改善され、心疾患や糖尿病のリスクが低減する可能性がある。
また、食物繊維は満腹感を長時間持続させるため、その結果、摂取カロリーが抑えられて正常体重が維持され、心疾患リスクが低減するのかもしれない。
もともと米国の食事ガイドラインでは、全粒穀物を毎日3皿以上摂取することを勧めている。だが、米国人は平均して全粒穀物を日に1皿未満しか食べていない。
48gの全粒穀物を摂取するには、全粒粉パンであれば1日にスライス3枚を食べる換算だ。ただし、米国農務省(USDA)によると、その食品が全粒穀物かどうかは見た目だけで判断できないため、表示を確認すべきだという。