ジカ熱は蚊が媒介する(shutterstock.com)
今なお中南米諸国を中心に猛威を振るうジカ熱。リオデジャネイロオリンピックの開幕まで3カ月を切る中、ブラジル当局はその対策に躍起になっている。
ジカ熱は、ジカウイルスを媒介するヤブカ属の「ネッタイシマカ」や「ヒトスジシマカ」に刺されることによって発症する感染症だ。
[an error occurred while processing this directive]ただし、感染しても約8割の人は発症せず、残り2割の人も重篤になるケースはまれだ。2〜7日の潜伏期間を経て、発熱や発疹、筋肉痛などの症状が現れ、7日以内には回復する。
しかし、妊婦が感染すると、一転して事態は深刻になる。先天的に頭が小さいために脳の発育不全につながる「小頭症」の新生児が生まれるリスクが跳ね上がるからだ。
2014年までブラジルで報告される小頭症の新生児の数は、毎年150人前後だったが、2015年12月27日〜2016年1月3日の1週間で報告数が3530人と急増。最も多く発生している地域では、100人当たり1人を超える小頭症の新生児が誕生したという。
日本での流行はあるのか?
では、日本でジカ熱が流行する可能性はどのくらいあるのだろうか?
北海道大学などからなる研究チームは今年の4月、研究論文「ジカウイルス感染症の輸入リスクおよび国内伝播リスクの推定」を英国科学誌『PeerJ』に発表。ジカ熱が今年末までに日本で流行する確率は16.6%だと結論づけている。
決して高くない数字だが、この推定は今年1月末までのデータを使用したもの。リオ五輪の開催による人の移動というファクターを加えれば、もっと確率が上がる可能性がある。
リオ五輪が開催される8月はブラジルでは冬に当たるが、その時期もネッタイシマカに刺される危険性はある。リオデジャネイロの平均最高気温は8月でも25.6℃、最低気温も18.9℃と、東京の6月や9月とほぼ同等だからだ。
日本にはネッタイシマカはいないが、ヒトスジシマカは青森以南に広く生息している。ブラジルでジカウイルスに感染した人が日本に入国し、ヒトスジシマカに刺された場合、その蚊を媒介してジカウイルスが拡散される可能性は十分にある。
ブラジルでのジカ熱の発生が初めて報告されたのは2015年5月だったが、半年後には数多くの小頭症の新生児が報告された。リオ五輪をきっかけに、複数の国で同じ悲劇が起きることが強く懸念されている。
流行を食い止めるには「蚊に刺されない」こと
ジカ熱流行地域との間で人々が移動する今年は、ひとりひとりが「蚊」への対策を強化すべきだ。ジカ熱を媒介するヒトスジシマカは平均気温が10℃以上の日が続くと活動期に入るため、今すぐにでも対策を始めたい。
まずは植木鉢の受け皿や放置したバケツ、古タイヤの中などの小さな水たまりには蚊の幼虫であるボウフラが発生しやすい。こまめに水を捨てて掃除をしておこう。
ヒトスジシマカは朝晩だけでなく日中も活発に人を刺す。夏場の日中もできる範囲で長袖・長ズボンを着用し、帽子や襟付き上着で肌の露出を少なくしよう。ボトムはチノパンのように肌と布地の間に空間があるものや、厚手のジーンズを履くと、より蚊に刺されにくい。