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【シリーズ「病名だけが知っている脳科学の謎と不思議」第3回】

ギラン・バレー症候群の名付け親は?〜年間およそ2000人もの日本人が苦しんでいる難病の正体

ギラン・バレー症候群の名付け親は?(shutterstock.com)

 病名や症候群名は、発見者自身が名付け親になるよりも、後世の人たちが発見者の功績を再評価したり、エビデンスを再認識して名付ける場合が少なくない。

 ギラン・バレー症候群も、フランス人医師のジョルジュ・チャールズ・ギランとジャン・アレクサンドル・バレーの名前を冠して誕生した。そこには皮肉な秘話が眠っているのだが……。

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 さて、ギラン・バレー症候群といえば、NHKの朝ドラに4度も挑戦し、ついにヒロインを射止め、この秋からスタートする連続テレビ小説「べっぴんさん」の主役を演じる女優の芳根京子さん(19歳)も罹った病気だ。

 芳根さんは中学2年生の時、急に四肢に力が入らなくなり、ギラン・バレー症候群と診断される。だが、治療に専念してわずか1年たらずで克服。2009年に他界した女優の大原麗子さんも、2012年に亡くなった男優の安岡力也さんも闘病した難病(特定疾患)だった。

どのような疾患なのか? なぜ発症するのか?

 ギラン・バレー症候群は、どのような疾患なのか? なぜ発症するのか?

 ギラン・バレー症候群は、筋肉を動かす運動神経に障害が起きるため、左右対称性の四肢筋力の低下、腱反射の消失、顔面麻痺、呼吸困難などの不快な症状を伴う。国内の発症率は人口10万人当たり1~2人(年間およそ2000人)。若年成人と高齢者に発症のピークがある。

 原因は何か? 発症の1~3週間前に咳、発熱、咽頭痛、頭痛、下痢などの感冒症状を示す場合が多く、サイトメガロウイルス、EBウイルスによる感染やマイコプラズマ、カンピロバクターなどの細菌による感染が引き金になり、自己免疫的な機序を介して発症する。つまり、免疫システムが末梢神経を攻撃することから、主に軸索(神経細胞の長い枝の部分)を取り囲む髄鞘(ずいしょう)に神経障害が生じる自己免疫性疾患だ。

 どのような症状が続くのか? 『メルクマニュアル18版』によれば、発熱,頭痛,四肢痛の後、下肢から左右対称性の麻痺が起きるため、麻痺は数日間で躯幹から上肢、頭蓋筋に急速に上行し、脊髄神経が侵される。

 感冒症状や下痢の後は、1~3週間で急速な四肢や顔面の筋力低下が現れる。通常は2~4週間でピークに達し、進行が停止すると徐々に快方に向かい、発病後3~6カ月から1年でおよそ6割が完治する。およそ3割は機能障害が残るが、感覚障害は軽い。だが、罹患者のおよそ3~5%が呼吸筋の麻痺、血液感染症、肺血栓、心停止などの合併症によって死亡するので、決して侮れない。

 また、舌や嚥下筋の支配神経に障害が出るため、しゃべりにくい、飲み込みにくいなどの症状も現れる。外眼筋の支配神経の障害によって物が2つに見える複視のほか、頻脈、不整脈、起立性低血圧、高血圧などが起きることもある。血漿交換療法、免疫グロブリン大量療法、免疫吸着療法などの治療が施されている。

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