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なぜ「産後うつ病」や「産後クライシス」が急増したのか?  妊産婦の7〜8人に1人がマタニティブルーに 

育児は母親だけの仕事ではない(shutterstock.com)

 妊娠・出産は、古今東西を問わず、女性とその家族にとって祝福すべき 大きなライフイベントだ。だが、「産後の肥立ちが悪い」というように、産後は、妊産婦ならではの心身の急変が起きるので、産後うつ病(PPD:Post-partum Depression)を発症しやすい。

 産後うつ病は、産後の数週間から数か月にわたって、気分が落ち込む、不安になる、眠れない、気力が失せる、集中力が下がるなどの症状が続く。悪化すれば、自傷、自殺、幼児虐待を招くリスクが高まるので、家族のサポートや適切な治療が必要になる。

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妊産婦の7〜8人に1人は、産後うつ病に苦しんでいる

 2000年の厚労省「健やか親子21検討会報告書」によれば、産後うつ病の発症率は13.4%、2005年の発表では12.8%。妊産婦のおよそ7〜8人に1人は、産後うつ病に悩んでいる。

 なぜ発症するのか?

 主な原因は、産後の内分泌学的な激変だ。妊娠中は、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが分泌されるためホルモンバランスが乱れやすく、体調不良や情緒不安定を伴うマタニティブルーが現れる。一方、出産直後は、女性ホルモンの分泌量が急激に低下しホルモンバランスの異常に襲われるので、さらに情緒が不安定になる。たとえば、睡眠が十分に取れない、家にこもりがちになり気分転換ができない、育児が思い通り進まない、夫に理解されないストレスに悩む、孤独感が強まるなどの症状が現れる。

 その他、夫や実母からの育児サポートの不足、夫婦の不和、対人関係のゆがみ、極度に苦しい経済事情、住居環境の制約などが情緒の不安定をさらに悪化させることも少なくない。

 産後うつ病の症状は、気分の落ち込み、楽しみの喪失、食欲、睡眠、意欲などの障害のほか、罪責感や希死念慮(死にたいと願う思い)も強まる。たとえば、赤ちゃんの状態が悪い、母乳の飲みが悪いなどを深く悩んだり、赤ちゃんへの愛情が実感できない、母親としての資格がない、世話が十分にできないなどの自責感を保健師、助産師、小児科医に訴える。

 さらに日々の育児不安や授乳負担が重なったり、とくに低体重児、先天奇形児、発達障害児などの養育のストレスが加わると、症状の慢性化や重症化を引き起こしやすい。母子の大切な出会いの時期に乳幼児の行動や表情への自然な応答ができなくなることから、乳幼児の情動や認知能力の発達に悪影響を及ぼすこともある。

 重症化すれば、抗うつ薬を使うが副作用もある。授乳中でも飲める安全性の高い抗うつ薬もあるので、医師のアドバイスを受けたい。また、磁気を用いて脳の特定の部位の血流を増加させ、機能回復させるTMS(経頭蓋磁気刺激法)という治療法もある。

 だが、産後うつ病の多くは軽症だ。心療内科や精神科の専門医によるケアやサポートを受ければ改善され、長期間の薬物療法や入院治療が必要になるケースは少ない。育児の不安を共有しあう育児サークルなどに出向いて、悩みを貯めこまないように気をつけよう。

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