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【シリーズ「子どもの心と体の不思議のサイエンス!」第16回】

赤ちゃんは「だっこ」による身体のふれ合いでも認知能力を発達させる

左側に赤ちゃんを抱くことが多いのはなぜ?/shutterstock

 言葉は、赤ちゃんが初めて体験する世界と自分を確実につなぐ最高のコミュニケーション手段だ。家族と言葉を交わし合い、ふれ合いながら、赤ちゃんの話す能力は、どんどん育まれていく。

 だが、赤ちゃんとのふれ合いや通じ合いは、言葉だけでは不十分だ。生まれたばかりの乳児期の赤ちゃんは、添い寝、だっこ、おんぶを通してお母さんと身体コミュニケーションを深めていく。だっこされると、赤ちゃんはお母さんと視線を合わせたり、語りかけに耳を傾けている。赤ちゃんに添い寝して、寝かしつけているうちに、お母さんはいつの間にかウトウトしてしまう。このように無意識のうちに、行動のリズムの波長が合ってくる現象を「引き込み現象」と呼ぶ。

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 たとえば、心拍のリズム。お母さんの心拍がゆっくりになると、それに釣られるように赤ちゃんの心拍も遅くなる。心拍と同じように、呼吸がゆっくりになると、赤ちゃんの呼吸も穏やかになって寝入ってしまう。これが、身体コミュニケーションによる「引き込み現象」だ。

だっこは赤ちゃんの特等席

 だっこをすると、赤ちゃんとお母さんの体はしっかりとふれ合い、お母さんの温かさ、柔らかさ、息づかいが赤ちゃんに安心感や一体感を感じさせる。だっこは、赤ちゃんに取っては、陽だまりの特等席だ。

 お母さんは、左側に赤ちゃんを抱くことが多い。なぜだろう? 人は危機に遭遇した時に、心臓のある左側をとっさに守ろうとする本能がある。赤ちゃんを左側に抱くのも、赤ちゃんを守ろうとする無意識の行動かもしれない。

 だっこの素晴らしさは、まだある。だっこをすると、赤ちゃんは、お母さんの表情がよく見える。声や息づかいだけでなく、アイコンタクトしながらお母さんを身近に感じることができる。

 首がすわってくれば、赤ちゃんは、周囲がよく見える縦のだっこやおんぶを喜ぶようになる。泣き止まない時に、だっこやおんぶの姿勢を変えるだけで泣き止むことがよくある。

 よく抱いてばかりいると、抱きぐせが付くと言うが、赤ちゃんに独立心が育てば、だっこもやがて卒業する。抱きたいだけ、だっこしてあげてほしい。だっこによるふれ合いは、赤ちゃんに安心感や信頼感を育みながら、認知能力や言葉の発達に大きな役割を果たしている。

 添い寝、だっこ、おんふは、最高の身体コミュニケーションだ!
(文=編集部)

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