上司からプレッシャーをかけられたり、理不尽なクレーム対応に追われたり、仕事上のストレスはメンタルだけでなく、身体の機能にも直接的に悪い影響を与えるものだ。そんな「ストレスたまり気味」という社会人に、ちょっと気になるニュースが飛び込んできた。最新の医学的調査で「脳卒中になるリスクの高い職業」が判明したというのだ。
働き盛りにある人たちが、脳梗塞や脳卒中で倒れてしまうケースを耳にすることが多い。脳卒中のリスクファクターは肥満や動脈硬化などさまざまだが、ストレスもそのひとつ。ストレスの蓄積は活性酸素を大量発生させるとともに、急激な血圧の上昇を引き起こし、脳卒中のリスクを引き上げてしまう。
[an error occurred while processing this directive]中国・広州南方医科大学心臓病学部のYuli Huang氏らが「Neurology」オンライン版に発表した論文によると、ストレスの多い仕事、なかでも「要求されることは厳しい半面、裁量権がほとんどない職業」に就くと、脳卒中リスクが高まる可能性があるという。
全脳卒中の4.4%が高ストレス職業に関連性がある
今回の研究は、13万8782人の男女を最長17年間追跡した6つの研究をまとめ、脳卒中を発症するリスクにどのような職業が関連しているかを検証した。6つの研究のうち3件はスウェーデン、残りは米国、日本、フィンランドで行われている。
研究チームは、それぞれの職業が持つ時間的な制約や精神的な要求度などを考慮し、仕事の要求・心理的負担と仕事をするうえでの自由度・裁量によって4つに分類し、解析を行った(肉体労働と総労働時間は考慮されていない)。職業の4分類は以下の通りだ。
①要求度も裁量度も低い、受動的な仕事(用務員や肉体労働者など)。
②要求度は低く、裁量度は高い、低ストレスの仕事(科学者や建築家など)。
③要求度は高く、裁量度は低い、高ストレスの仕事(ウエイトレス、看護助手、サービス業など)。
④要求度も裁量度も高い、能動的な仕事(医師や教師、エンジニアなど)。
その結果、ウエイトレスや看護助手に代表される「③要求度は高く、裁量度は低い、高ストレスの仕事」に就く人たちの脳卒中リスクが、科学者や建築家などの「②要求度は低く、裁量度は高い、低ストレスの仕事」に比べて22%も高かった。特に女性のリスクの上昇率が大きく、33%も上昇した。
さらに、脳の血管が詰まることによって起こる「虚血性脳卒中」の発症に限ると、「③高ストレス仕事群」が「②低ストレス仕事群」よりも58%も高かった。研究者らは、全脳卒中の4.4%が高ストレス職業に関連性があると分析。さらに女性では、その割合が6.5%に増加すると見ている。一方で「①要求度も裁量度も低い、受動的な仕事」と「④要求度も裁量度も高い、能動的な仕事」では、リスク上昇は見られなかった。