高齢者は家事や散歩程度でOK? (shutterstock.com)
誰もが単に長生きを望むのではなく、自立して生活できる「健康寿命」を伸ばしたいと願っている。
高齢になっても健康を維持するためには、正しい食事や睡眠だけでなく、適度な運動が必要なことはもう何度も耳にしているだろう。ただ、頭では理解していても高齢者にとってはハードルが高いものだ。
[an error occurred while processing this directive]何か「特別な運動」を疲れるまで頑張らなければいけないのでは? と思うと億劫になってしまう。あるいは「体重が重い」「膝や腰が痛い」という理由で、自分に運動は無理だと諦めてしまう。人は「ゼロか100か」の思考になるとモチベーションが上がらず、結局ゼロのままということになりがちだ。
しかし、人にとって運動は、10でも20でも、ゼロに比べれば身体に劇的な変化をもたらすことが、最近、アメリカの研究で明らかになっている。特に高齢者ほど、それによって享受するものが大きいというのだ。
週5時間のゆったり運動でOK
「ごく軽い運動であっても週に合計5時間程度行えば、65歳以上の高齢者にとって非常に有益なことがわかった」と言うのは、米オレゴン州立大学公衆衛生・人間科学部のブラッド・カーディナル教授。
「軽めの運動や身体活動を週5時間するだけで、健康改善につながる多くのベネフィットを得られる。1週間は168時間だから、たった3%を費やせばよく、多くの人にとって取り組みやすいはず」と強調する。
従来、アメリカ人のための運動ガイドラインでは、高齢者の健康を維持するためには週に最低「75分の強い有酸素運動」か「150分の中程度の有酸素運動」を行うことが推奨されている。
WHO(世界保健機関)によると、運動強度を「MET」という単位で示したとき、中程度の運動は3~6MET。強めの運動は6METを超える。中程度の運動の目安は散歩やダンス、ガーデニングなど。強めの運動はランニングや自転車、エアロビクスとなる。
オレゴン州立大学を中心とした研究チームは、全米規模で行われている国民健康調査(NHANES)の中でも、特に運動や身体活動についてのデータが充実している2003〜2006年の調査結果を解析した。
その結果、ごく軽めの運動を週に5時間以上行っていた高齢者では、運動をまったく行わなかった高齢者に比べて、健康指標が平均18%も高いことが判明した。
具体的には、BMI(体格指数)が適正でウエストが細く、インスリン値も正常で、慢性疾患の有病率も低かったという。軽めの運動の例としては、無理のないウォーキングや、ゆっくりとしたダンス、卓球のようなのんびりした競技のほか、家事などの身体活動も含まれる。
65歳以上の高齢者は、ケガや健康への悪影響を恐れて、運動をためらう傾向がある。しかし、強度の低い運動であれば、簡単に取り組めて続けやすく、医師のメディカルチェックも不要というメリットがある。