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【連載 薬は飲まないにこしたことはない 第17回】

「大きな病院、有名な医者、よく耳にする薬」を決して過信してはいけない理由がある

医師は万能の人ではない!?shutterstock.com

 いまだに大病院などで問題になっている"3時間待ちの3分診療"。患者の中には、たとえ診察時に医者が一度も目を見て話さなかったとしても、「有名な先生に見てもらった」と満足している人もいるようだ。

 また、どんなに診察時間が短くても「医者は難しい国家試験を突破した医療のプロフェッショナル。言うことに間違いはないはずだから、きちんと聞くべきだ」と考えている人も多いという。

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 たった3分の診察で、どこまで判断できるのか。身体は一人ひとり異なっているため、医者は経験と数値の平均値などから診断を導き出すしかない。患者の健康を助ける医療の専門家といえども、万能の神ではないのだ。

 一方、海外では"本来命を救うはずの医療行為には命を奪う可能性がある"ということを暗に示す出来事が起こっている。

 1973年、イスラエルで医者がストライキを決行した。1カ月の期間中、診察を受けた患者は通常の6万5000人から大幅に減って7000人ほどになった。その間死亡率はなんと半減したという。
 
 1976年に南米コロンビアで52日間のストライキが起こった時には、救急医療以外の医療はいっさい行われなかった。それにもかかわらず、このストの期間中に死亡率が35%も低下した。

 同年、米国ロサンゼルスでも医者のストライキが起こる。死亡率は18%低下。通常時に比べ手術件数は60%少なかった。そして、スト終了後医療機関が再開すると、死亡率は18%上がり、以前と同じ水準に戻ったという。

 診察を受けられないという状況であったのに、なぜ死亡率が減ったのだろうか。その理由として、手術件数のほか薬の処方量(投与数)の減少が考えられる。つまり、これは手術や薬を含めた医療行為全体に死亡率を高めるリスクがある、言い換えれば医療によって命を落とすリスクがあるということなのだ。

医者にまかせきりにせず、自分の身体は自分で守る

 誤解しないでほしいが、なにも「医者はいらない」と言っているわけではない。ただ、どんな権威があるといわれている医者であれ、こうしたリスクをゼロにはできないのだ。医者は病気の専門家だが、その話をすべて鵜呑みにすることは感心できない。「大きな病院、有名な医者、よく耳にする薬だから安心」という気持ちも理解できなくはないが、提供された医療が自分自身に合うかどうかは、自分にしかわからないはずだ。

 残念なことに、"医療界が病気をつくっている"という現実は少なからずある。それを避けるためには何をしたらよいのか。患者には、病院で処方される薬、治療の詳細内容、治療リスクなどについて、知る権利があり責任もある。"自分の身体の専門家"である自分自身が、治療のメリットとデメリットをしっかり把握してから、医者の指示に従うかどうか、薬を服用するかどうかの最終判断を行うべきだ。

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