あなたは生命保険貧乏になっていないか!?shutterstock.com
つまるところ健康とは、肉体に不自由がないことと、精神の安定と安心から成り立っている。このココロの"安心"のために、現代の日本人の多くが入っているのが「生命保険」だ。
しかし、平均寿命が延び、経済状況も刻々と変わるこの時代に、本当に生命保険はあなたの健康に貢献しているのだろうか。
[an error occurred while processing this directive]「保険は99%が外れる宝くじ」――。こんな衝撃的な見出しからはじまるのは、「保険相談室」代表・後田亨氏の著書『保険会社が知られたくない生保の話』だ。その背景には、こんな数字がある。
厚生労働省が公表している「第21回生命表」によると、30歳の男性が40歳までに亡くなる確率は1%未満。保険契約時に必要な健康調査で、加入要件を満たしている持病のない"健康"と認定された男性なら、その確率はさらに低くなる。つまり、30歳の男性が向こう10年間に死亡したときに備える保険を「買う=契約する」ことは、99%外れる宝くじを買うようなものなのだ。
子どもがいない夫婦は生命保険よりも貯蓄を優先すべし
ただし、上記のように99%当たるはずがないとされる商品でも、唯一、専門家がこぞって評価する商品がある。それは「世帯主の万が一に、一定期間備える目的」の保険。つまり、子どもが自立するまでの一定期間、健康な世帯主に万が一のことがあった場合への備えは、生命保険の受け持つ最も得意なパートであり、健全な購入動機と言えるのだという。
逆に言えば、夫婦共働きで子どもはいない、というような夫婦なら、保険会社にコストを払うより、何よりも優先すべきは貯蓄。「お金を"貯めて"、どうしても備えたい目的と期間だけに、保険はあとから"買えば"よい」となる。
というのも、現在の日本では、以下のような社会背景があるからだ。
▶︎健康保険制度がある:民間の医療保険は入院しか対応しないが、健康保険は日常的な医療をカバーするだけでなく高額療養費制度もある。
▶︎金融機関の安定感・信頼感がある
▶︎内視鏡手術の普及などで入院日数が短期化している
死亡、大病、介護、老後と、あれこれ欲ばりに不安に備えるよりも、まずは、貯蓄に励むこと。その備えが何よりも安心感の土台となるのではないだろうか。
税制改革で「終身保険」の見方が変わる
ただし「終身保険」について考える際には、今年の税制改革を念頭に入れておこう。今年1月から、相続税の基礎控除が従来の6割に縮小された。これまで「相続税がかかるほどじゃない」と考えていた土地・家屋にも相続税が発生することが増えたのだ。
かつては、高額な保険料のかかる終身保険のメリットは、実のところ「相続税対策が必要なごく一部の資産家に限る」と考えられていた。ところが、この税制改革によって、思わぬ人がその目的に合致するというような場合が出てくるのだ。
子どもができたら、その子どもが独立するまでの備えとして生命保険に加入する。その責務を果たしたら、今度は親から受け継いだ土地を切り売りしたりすることなく、子どもに引き継ぐために終身保険に加入する!?
相続税は、法定相続人の数と相続財産によりけりだが、やれやれ心配すればキリがない。
こんな毎日に備えるのは容易ではないが、肝に銘じておくべきは、「タダで一生涯の安心など手に入るはずもない」ということ。自分は、子育て世代か、夫婦共稼ぎか、妻は専業主婦か、あるいはおひとりさまか? また、いま人生のどのライフステージにいるのか?
自分に合う生命保険を検討するのは、ある程度まとまった貯蓄ができてからでも遅くはない。くれぐれも保険ビンボーになって、かえって支払い不安や途中解約の憂鬱を抱え込むことのないようにしたいものだ。
(文=編集部)