10項目余りの簡単な質問に回答するだけで、自分の5年以内の死亡リスクを予測できる計算ツールがウェブサイト「Ubble UK Longevity Explorer」で公開された。
このツールは、スウェーデンUppsala大学のErik Ingelsson氏らが開発。イギリスに住む40~70歳の使用者を想定したもので、「Ubble年齢」と「5年以内の死亡リスク」を算出することができる。
[an error occurred while processing this directive]Ubble年齢とは、「ツールで判定された自分の死亡リスクは、何歳の平均死亡リスクに相当するか」を表したものだ。たとえば、実際は41歳であっても、5年以内の死亡リスクが0.9%と示されれば、Ubble年齢はその値が平均値である45歳となる。
質問は男性が13項目、女性が11項目。ツールの使い方も簡単だ。サイトのトップページにある「Risk Calculator」をクリックすると質問画面に移る。質問内容は、年齢、性別、子どもの人数、喫煙習慣、自己評価による健康状態、がんの診断歴、歩行速度、保有する車の台数など。所要時間は数分しかかからない。
生理学的検査値や生活習慣因子よりも予測能が高い"歩行速度"
同ツールは、37歳~73歳のイギリス人約50万人を対象とした、生体試料を収集・保管・管理し、医学研究に有効に活用するシステムであるUKバイオバンクの研究データ解析の結果に基づいて作成された(Lancetオンライン版 2015年6月4日に掲載)。
この研究では、人口学的な因子や健康・生活習慣因子など655の因子を評価し、コンピュータプログラムで死亡リスクに対する最も強力な予測因子を特定した。その結果、男性では自己評価による健康状態、女性ではがんの診断歴という結果が得られた。疾患や障害がある人を除外した場合は、喫煙習慣が最も強い因子であった。
また、Ingresson氏らによると、各因子の死亡リスク予測能の比較から、①自己報告による歩行速度や過去2年の疾患・外傷の履歴は、血圧や脈拍などの測定値よりも強い予測因子になる、②自己報告による歩行速度は、生活習慣因子よりも強い因子になる、という2つの興味深い知見が得られたという。
同氏らは「予測精度が高いこのツールで5年以内の死亡リスクを知り、一人ひとりに健康に対する意識を高めてほしい。また、医師には高いリスクを持つ人の同定に役立ててもらいたい」と述べている。
一方、この計算ツールが実際に人々の健康意識の向上に役立つかどうか疑いを持つ研究者もいる。Lancetの付随論評では、イギリスCambridge大学のSimon Thompson氏とPeter Willeit氏が、「ツールにはサイバー心気症を引き起こす可能性がある」と主張している。サイバー心気症とは、体調不良時にインターネットで症状について検索し、「重い病気にかかっているのではないか」と不安になり、さらに体調を崩してしまう状態のこと。さらに、「5年以内という短期の死亡リスクを特定するより、将来どのような病気にかかる可能性があるかを予測するほうが重要」と指摘している。
さて、あなたは、この計算ツールが判定した5年以内の死亡リスクを、信じる? 信じない?
(文=編集部)