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不眠症や鼻炎の薬の過剰摂取は認知症リスクを高める!花粉症の薬も注意

処方薬でも危険なケースが?

 ドラッグストアで手に入る身近な薬でも、安易に長く飲み続けると、深刻な副作用を起こす可能性があることが指摘されている。しかし、医療機関で処方される薬であっても、同様に危険なケースもある。

 2015年1月、米国医師会が発行する医学雑誌『JAMA』にひとつの新しい研究報告が掲載された。それによると、不眠症やアレルギー性鼻炎などに処方される「抗コリン薬」を高齢者が長期間過剰に服用すると、認知症を発症するリスクが高くなるというのだ。

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 抗コリン薬とは、神経伝達物質のひとつであるアセチルコリンが、アセチルコリン受容体に結合するのを阻害する薬だ。この抗コリン作用によって副交感神経が抑制されるもので、主に胃腸けいれん止めや吐き気止め、抗うつ薬などにも使用されている。さらに総合感冒薬や花粉症、めまい、酔い止めなどとして処方される「抗ヒスタミン剤」にも抗コリン作用がある。私たちにとって、ごく身近な薬剤なのだ。

 これまでも抗コリン薬を使うと、一時的に認知障害が生じる場合があることは知られていた。だが、それは服薬を中止すれば元に戻るものだ。しかし、一方では「認知症との関連もある」と見る研究も少なからず存在していた。

434名の高齢者への追跡調査で判明

 今回の研究では、ワシントン大学のShelly L. Gray医学博士らの研究チームが、65歳以上で認知症の兆候が出ていない434名を対象に、2年ごとに追跡調査を実施。それぞれの投薬記録から抗コリン薬の投与状況を調査して、後に認知症と診断された割合と合わせて分析を行った。

 期間中、被験者の間で最も多く服用されていたのは、抗うつ薬や花粉症の薬、睡眠補助薬となる抗ヒスタミン薬、失禁抑制薬など。そのうち2割は、薬局の店頭で購入できる一般用医薬品だった。

 結果的に、調査参加者の2割強に当たる797名が認知症を発症。そのうち8割はアルツハイマー病だった。そこで、認知症及びアルツハイマー病の発症と、抗コリン薬の使用状況の関係を調べたところ、抗コリン薬を長期間に渡って多く服用するほど認知症のリスクが増していたという。

 標準的な1日の用量を合わせて3カ月~1年間使用した場合、認知症の発症リスクは1.19倍に増加。さらに3年以上使用すると、認知症全体の発症リスクは1.54倍、アルツハイマー病の発症リスクは1.63倍に増加していた。つまり合計で3カ月以上服用すると徐々に認知症リスクが上昇し始め、3年を越えると有意な違いが出てくるという。ちなみに今回の研究では、薬剤による違いは明らかになっていない。

複数の薬を飲む人はさらなる注意を

 注意したいのは、65歳以上の人が1日に2種類の抗コリン薬を服用していれば、半分の期間で同じリスクが生じる可能性があるということだ。そして、連続して服用した期間ではなく、長年にわたる「合算」であることにも注意を払うべきかもしれない。アレルギー性鼻炎の薬や神経疾患の治療薬などは、ある程度長く飲み続けることがある。そう考えるとこの問題は、高齢者だけのものでなないだろう。

 医療従事者だけでなく薬を処方してもらう私たち患者も、ある程度このリスクを認識しておく必要があるのではないだろうか。抗コリン薬の使用は、時間をかけてゆっくりと最小限の量に減らしていく努力が重要だということだ。
(文=編集部)

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