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【インタビュー成人の2人に1人は顎関節症 第1回 大阪歯科大学附属病院 覚道健治院長】

恵方巻におもいっきりかぶりつけますか? 成人2人に1人が顎関節症!?

恵方巻はかぶりつくのが流儀 TSUYOSHI / PIXTA(ピクスタ)

 口が開きにくい、口を開け閉めするとカクカク音がして痛い、頬やこめかみ、耳のまわりが痛む。こんな症状があれば顎関節症の可能性がある。顎関節症は、アゴの関節に関わる病気の中で最も多く、主な原因は、噛み合わせ障害、歯ぎしり、ストレスなど。患者は40代が中心で、厚生労働省の調べでは歯科治療中の5%、20人に1人が悩んでいるという。食事のときの「噛みグセ」なども影響しているという顎関節症。大阪歯科大学附属病院の覚道健治院長に治療法と予防、改善のポイントを取材した。

成人の2人に1人が悩む顎関節症。噛み合わせ障害、歯ぎしり、ストレスが主な原因

 成人の46%がアゴに何らかの違和感を感じているとか。代表的な症状は、アゴの痛み、口が開かない、アゴを動かすとカクカクして痛い、の3つ。こうした症状は、「顎関節痛」「開口障害」「顎関節雑音」と呼ばれ、いずれか1つ以上の症状があれば顎関節症の可能性が濃厚だ。

「アゴの動きの異常は、顎関節や咀嚼筋(そしゃくきん)に大きな機械的なストレスが加わるため。主な原因は咬合(噛み合わせ)障害と歯ぎしり、食いしばりといったパラファンクションです」と覚道院長。
 
 咬合障害があると顎関節内の下顎頭の位置や関節円板がズレる。同院長によると「受診者の7割に関節円板のズレが見られます」。また、ストレスで咀嚼筋の緊張が高まり、パラファンクションが発生し、顎関節に大きな負担がかかることも症状を重くしている。

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 こうした状態が続くと、「口が2~3㌢ほどしか開けられずに食べるのが辛くなり、無理に開けると痛む。噛みしめや歯ぎしりは筋肉疲労、血行障害を生じさせ、しこりができます。これが慢性的な頭痛や肩こりなどの筋肉障害につながる。顎関節症は、生活や仕事へも悪影響を与えるのです」(同院長)という。顎関節症外来などの専門医の適切な診断を。

 治療方法としては、マウスピースで関節や筋肉を安静に保つ保存治療、歯を削って噛み合せを調節する外科的治療、鎮痛薬を投与して炎症を鎮める方法の3種類が一般的だ。「保存療法は、スプリントと呼ぶプラスチックの板を歯にかぶせて、噛み合わせを調整しながら関節円板をもとに戻したり、関節の負担を軽くしたりします。関節円板のズレがもとに戻らないときは、局所麻酔をして外科的にズレを治す。炎症がひどいときは注射で関節の中を洗い、潤滑剤を注入するケースもあります」と同院長。

 このほか、筋肉の電気的マッサージや温湿布で血行をよくする理学療法も用いられる。また、関節円板が動かなくなった場合は、関節付近に小さな穴を開けるだけで済む内視鏡手術もある。こうした治療は、いずれもMRI検査が必要なケースもあるので、まずは、専門医を受診すること。
 同院長は「自覚症状があったら、かかりつけの歯科医に相談し、大学附属病院の顎関節症外来や歯科口腔外科の専門医を紹介してもらうこと。まず適切な診断を受けることが先決です」とアドバイスする。

食べグセなどの食習慣の改善で、顎関節症を予防しよう

 正しい食事の習慣は、顎関節症の予防や症状改善につながる。食べグセを改善するための注意点は以下の通りだ。

 食事は、最低20分かけて食べる/ひと口30回以上噛み、食べ終えたらいったん箸を置く/一口を、食べやすい大きさに切る/フランスパン、するめ、ビーフジャーキー、タコ、イカなどの奥歯で噛みしめたり、引きちぎる食べ物を避ける/軟らかめのご飯、卵、ヨーグルトなどを食べる/汁物は口の中が空になってから飲む/一人きりで食べない/食前、食後にガムを噛むなどだ。

 次回は顎関節症の予防に役立つ、簡単なアゴの筋肉体操や首や肩の筋肉ストレッチングを紹介しよう。
(取材・文=佐藤博)


覚道健治(かくどうけんじ)
大阪歯科大学附属病院院長、口腔外科教授
1974年、大阪歯科大学卒業、83年、大阪歯科大学口腔外科学第1講座講師、97年、大阪歯科大学口腔外科学第2講座教授、2001年、大阪歯科大学附属病院副病院長、08年、大阪歯科大学附属病院院長に就任。
日本顎関節学会(理事長2012年まで)、日本口腔リハビリテーション学会(理事長)、日本歯科医学会(理事)、日本口腔外科学会(理事)、日本歯科薬物療法学会(理事)、日本口腔外科学会(指導医,口腔外科専門医)、インフェクションコントロールドクター(ICD)。『口腔顎顔面疾患カラーアトラス』(2012年、永末書店)、『歯科臨床研修マニュアル起こりうる問題点と解決法』(同、永末書店)など。

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