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【インフルエンザのヒミツに迫る! 第3回】

インフルエンザが冬になると猛威を振るうのはなぜなのか?

インフルエンザのルーツと推測されているのはアヒル・豚・人間が共同生活する中国南部shutterstock

 インフルエンザウイルスは1年中、地球上に生存しているが、冬に「暴走」するのはなぜだろうか?

 理由はいくつかある。

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 第1に冬の気象条件である温度20℃内外、湿度20%内外の低温度・低湿度は、インフルエンザウイルスが空気中に長時間にわたって生息できる最適な環境だからだ。

 一方、寒い冬は人間にとっては不利な状況になる。鼻・のど・気管などの血管が収縮し、気道の粘膜細胞を覆っている線毛の動きが鈍くなる。線毛はウイルスや細菌の侵入を防ぐように働くので、その働きが悪くなればウイルスの侵入が早まる。

 さらに、冬は窓を閉め切った部屋で過ごすことが多いため、感染した患者の咳やくしゃみによってウイルスがまき散らされ、感染が広がりやすくなる。

 ウイルスが気道の粘膜細胞に付着すると16時間後に1万個、24時間後に100万個の猛スピードで増殖するので、粘膜細胞が破壊され、非常に短い潜伏期間でウイルスの強い感染に曝される。

 インフルエンザウイルスのA型、B型、C型のうち、A型は人間と動物(鳥類、ウマ、ブタなど)の共通感染症だ。最初はカモなどの水鳥の腸内に感染する弱毒性のウイルスだったが、遺伝子の突然変異によって人間の呼吸器に感染する形質を獲得した。

 現在、インフルエンザのルーツと考えられているのは、アヒル・豚・人間が共同生活する中国南部だ。WHO(世界保健機関)のパンデミックインフルエンザ基本構想(PIP-Framework)に基づき、国際協力のもとでインフルエンザ監視対応体制(GISRS)が敷かれている。

免疫防御をかいくぐって生き残るA型ウイルス

 人間は体内に侵入したウイルスを排除する適応免疫や獲得免疫と呼ぶ免疫機構を備えている。これは恒常性維持と生体防御に大活躍する生体の生命線だ。そのため、たとえウイルスに感染しても、いったん回復すると抗体が生成されるため、再感染はしない。

 しかし、突然変異を起こしやすいA型は、ウイルスの表面にある2種類の突起、HA(赤血球凝集素)とNA(ノイラミニダーゼ酵素)の抗原性を毎年、変化させるので、免疫防御を巧みにくぐり抜けて生き延び、流行を繰り返す。これを連続抗原変異という。

 抗原性の変化が大きれば、以前にA型に感染して免疫があっても、再び別のA型の感染を受け、症状も重くなる。

 さらに、A型は10~30年ごとに突然、別の型に大変身し、大流行をもたらす。これを不連続抗原変異という。香港A型の流行から29年、ソ連A型から20年がすでに経過しているので、パンデミックは近いかも知れない。 

 しかし、ウイルスによって形成された免疫記憶は、2回目の遭遇には増強される。この獲得免疫のプロセスこそが、インフルエンザワクチン接種の根拠だ。
(文=編集部)

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