「寒くなると古傷が痛む」「雨模様になると片頭痛がする」。気象や季節の変わり目に体調が悪くなる人は少なくない。気温や気圧、湿度など急激な変化で起こる病気が「気象病」だ。多くの人が経験しているが、あまり馴染みのない名称ではないだろうか? さらに、気象が生体に及ぼす影響を研究する「生気象学」という分野もある。
その先進国はドイツだ。1952年に医師や気象学者らが共同で天気と病気の相関関係を検討し、心臓病などの患者を抱える医療機関に医学気象予報を提供した。その後、地球温暖化や異常気象問題で注目を集めるようになり、1992年ごろからは一般市民向けに、風邪やうつ病、気管支炎など約30種類もの疾患に対して予報している。日本でも、気象と脳血管の関係などについて研究が進められているとのこと。
[an error occurred while processing this directive]ご用心! 冬は血管が収縮して高血圧に
寒さが身にしみる季節になると、関節痛やぜんそくなどが頭をもたげてはいないだろうか? 気温や気圧の急激な変化は自律神経のバランスが崩れやすく、持病のある人は「冬は仕方がない」とあきらめがち。また、乾燥した寒気は鼻やのどの粘膜を直撃して、風邪やインフルエンザなどを引き連れてくる。
ご存じの方も多いと思うが、冬の寒気は体を委縮・緊張させるため、血管は収縮して血圧が上昇傾向になる。普段から血圧が高い人は要注意だ。脳卒中やくも膜下出血など、脳血管に関係のある病気は、冬晴れの日に多く発症するといわれている。狭心症も冬場に多くみられる。医師から狭心症に注意するよういわれた人は、寒風に晒されながら外出するようなことは避けたほうがいい。
傷跡の痛みや神経痛、リウマチによる関節痛なども気象の変化が関連して悪影響を及ぼす。加えて、気管支ぜんそくの持病がある人は、朝冷えから日中の気温の上昇時などに発作が起こりやすいといわれているので用心しなければならない。
さらに、季節による感情障害もある。日照時間の短い冬場になると「なんとなく憂鬱」とふさぎ込む季節性依存症のうつ病も見られる。どんより曇った寒い日や雨の日は誰しも憂鬱になり、頭重感がするという人もいるだろう。
気象を味方につけて体調管理
こうしてみると体調と気象の密接な関係がよく分かり、思いあたる節がたくさんある。毎朝、漠然と眺めていたテレビの天気予報の見方も変わってくるはず。持病のある人、ちょっと疲れ気味、夕べは飲み過ぎたという人は、無理をしないで刻々と変化する気象情報を味方につけて体調管理といきたいところだ。
日常生活では、入浴時はあらかじめ浴室を温めておいて温度差をなくす。夜中にトイレに立つ時は室内との温度差に注意し、いきむ時にも配慮したい。特に血圧が高めな人、狭心症などが気がかりな人は細心の注意をはらおう。
外出から帰ったら、うがい、手洗いの励行は冬場の大事な生活習慣。月並みだが寒風からのどや鼻の粘膜を守るためにはマスクの装着がお勧め。これからが本番、風邪やエンフルエンザといった季節病をシャットアウトすることは余病も防ぐ基本といえる。
(文=編集部)