認定基準が変わった身体障害者手帳 南ライラ/PIXTA(ピクスタ)
体に障害がある、または障害が残った時に申請すると交付される身体障害者手帳。視覚障害者1〜6級、聴覚障害者2〜4、6級、肢体不自由(上肢・下肢)1〜7級、内部障害1、3、4級など、8種類がある。障害があると何をするにも不自由なうえに、医療費がかさむ、就職にハンディがあるなど、経済的に苦しくなることは多い。そこで、日本では障害者手帳が交付されると、助成や援助を受けることができる。
障害の大きさによって所得税や住民税等の控除、医療費助成、公共交通機関の運賃割引や携帯電話の料金割引、公共施設の入場割引、駐車禁止除外標章の公布、NHK受信料減免などのサービスが受けられる。しかし、この4月に「身体障害者」から外された障害がある。
[an error occurred while processing this directive]今年1月に厚生労働省社会・援護局障害保健副支部長より各都道府県知事、各指定都市市長、中核市市長宛にお達しが届いた。それは、『「身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について」の一部改正について』という文書のなかに記されていた。
●外されたのは人工関節とペースメーカー
これまでは、人工関節の置換やペースメーカーを植え込んだ人すべてに身体障害者手帳が交付されていた。改正文書は、「股関節に人口骨頭または人工関節を用いたもの」をきれいさっぱり削除。膝関節、足関節も同様だ。さらに内臓の機能障害では、「人工ペースメーカーを装着したもの」が、「ペースメーカーを植え込み、自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの、先天性疾患によりペースメーカーを植え込みしたもの」に変わった。適用は平成26年4月1日からだ。
「申請すれば障害者手帳が交付されると聞いていました。交通費が安くなったり、公共の美術館や動物園なども安く楽しめたりできるかなと、少し期待していたのに...」今年6月に両側人工股関節全置換術を受けたA子さん(50歳)のケースからその是非を考える。
A子さんは、手術前に執刀医から「今年4月から、申請しても身体障害者手帳がもらえないという人が続出している」と聞き、厚労省のお達しを知った。術後は、痛みやつらいリハビリを経て20日後に杖をついて退院。帰宅してからも痛みは続き、関節の稼働域もさほど広がらず、外出できない不自由な生活が続いた。
●一律に交付するほうが問題!?
手術から5カ月後、A子さんはかなり回復。「立っているだけでもつらく、安眠できない股関節痛から開放されて本当に幸せ。家事もストレスなくこなせるようになりました。スポーツクラブにもおそるおそる通いはじめました。稼働域は完璧ではありませんが、ハイヒールも履けますし、日常生活での不自由さはまったくありません」と話す。そして、「これで身体障害者手帳がもらえていたら、ちょっとズルだったかも」と付け加えた。
A子さんのようなケースでも、これまで身体障害者手帳が交付されていたのだから、もらい得だったとはいえないか。回復が思わしくなく術後数年経っても杖が必要な人もいるが、医療技術が格段に向上し、人工関節置換やペースメーカーの植え込みによって日常生活を送る人は非常に多くなった。これまで障害の程度に差があるのに、一律に身体障害者手帳を交付していたこと自体が問題だったのかもしれない。
(文=編集部)